ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 化物狂詩曲-ラプソディ- ( No.5 )
- 日時: 2011/04/03 22:09
- 名前: 緑紫 (ID: rb3ZQ5pX)
- 参照: コ メ を く れ ! ←
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自分が話を合わせれば、人は勝手に自分に懐いてくれる。
だから俺は今日も、昨日もついでに明日も、“優しい自分”を演じるわけだ。
しかし本当は男子同士で殴り合いとかしたいし、学ランのホックとか第一ボタンとかカッターの袖ボタンとか開けたい。
やっていないのか、と言うと、全くそのとおりである。
一応これでも優等生っちゃ優等生だし、自他共に認める程頭の回転とか早い。
けれど俺は、何故だか“鈍感”らしい。 何処をどう見ればそう言えるのか、50文字以内で説明してもらいたいな。
なんて、少し前振りが長くなってしまった。
じゃあ始めるか。
ただの人間と、次から次へと出てくる化物達との物語を。
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その日、俺は自由な日を満喫していた。
朝9時に起きて、食パンにマーガリン塗って、適当に10時までぐーたら過ごして、10時から散歩に出掛ける。
そんな計画を頭の中で組み立てていた。
そして9時半。
つまり散歩に出る30分前のことである。
『今入って来たニュースです。
先程9時27分頃、マンションの屋上で死体が発見されました。
死体は30代後半男性のものとみられるもので、身体がバラバラになって放置されていました。
犯人は未だ逃亡中らしく、警察は行方を追っています』
「…朝っぱらから嫌なモン見せんなや…」
恐いよ、散歩行きたかったのに。
行くのやめようかな、なんて思ったが、部屋にいたって暇だし、外に出たとしても現場に近付かなければいいだけの話だ。
そんな俺の考えは、すごく甘かったと今でも反省している。
自分はなんて甘ちゃんなんだろう。
俺はテレビの電源を落とし、(高校生になってまで着ているなんて恥ずかしいが)パジャマからお気に入りのジャージに着替え、軽く筋トレをする。
それから時間がまだ余っていたので食べ終えた食器を洗い、45分、椅子に腰掛け時計をただぼーっと眺める。
それから15分は、まだ出来ていない宿題を終わらせようと頑張り、気付けば58分。 靴を履いて家の鍵を閉めれば丁度10時だろう。
と、椅子から立ち上がり、お気に入りの緑色のラインが1本入ったスニーカーを履いて、鍵を閉めた。
何時親達が帰ってくるか解らないから、鍵は家族にしか解らない“秘密の場所”に置いておいたが。
この時実は少し戸惑いを感じていたのだが——本当に、どうして自分はあそこでやめよう、と思わなかったのか。
だからあんな出会いをしてしまったんだ。
決して嬉しくは無い出会いを。