ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: L I N Q ( No.5 )
- 日時: 2011/04/16 23:23
- 名前: ライダー (ID: BZFXj35Y)
「クルーエル、オイラ達も外に遊び行こうよ………」
現時刻の施設1階の食堂は閑散としていた。理由は、今の時間は唯一許された外出可能時間だからである。
ほとんどのLINQ達は施設におらず、山のふもとにある港や森の方へ外出中であった。
しかし、食堂には上下黒ジャージ姿のLINQと小太りのLINQが円卓に暇そうに腰をかけていた。
「1人で行って来い。俺は訓練場で鍛えてくる。」
「クルーエルは十分強いでしょ。14体の中で能力使わずにマスターと対等にやり合えるなんて。」
赤色の無地のパーカーを着た豚鼻が特徴的なLinq-04のグアマンドは、捻くれながらも尊敬を込めて言う。
「世界終焉なんてな、俺が1人で全部止めてやる。」
肩から足首に白いラインが1本入った黒ジャージを着た紫色の髪のLinq-02のクルーエルは微笑しながら言う。
「たまには息抜きも必要だよ〜、外に遊び行こうよぉ〜」
「俺らは‘兵器’なんだぞ?兵器に息抜きも遊びもあるかよ。」
クルーエルは冷めた口調でグアマンドに言うと、その場で首の骨を鳴らして手首をほぐし始める。
グアマンドはため息を吐くと、ズボンのポケットから水色の包み紙に包まれた飴玉を取り出して口に入れた。
「糖分取り過ぎは体に悪いぞ。」
「オイラの能力知ってるでしょ?糖分も脂肪分も関係ないよ。」
グアマンドは大きな手を広げ、掌をクルーエルに見せつけた。
掌には犬歯が伸びた口が奇妙に蠢いており、口の中からは3つの青い舌が不気味に動いている。
「相変わらずグロイな。ま、お前の能力と戦闘技術は認めるよ。」
クルーエルは笑ったが目が笑っていなかった。立ち上がり、食堂を後にしようとしたその時だった。
「クルーエル君、グアマンド君。」
食堂の出入り口から施設員である凪川明日花が2人を呼びとめた。
ポニーテールと赤い眼鏡をかけ、見た目は完全に天然女子に見える明日花は2人に歩み寄る。
「また訓練場?外出時間は外に行ってリフレッシュでもしてくれば?」
「人間は黙ってろ。リフレッシュなど、我々LINQに必要ない。」
クルーエルは冷めた口調で明日花に言い放ち、そのまま食堂から出て行った。
残ったグアマンドは明日花をチラリと見ると、駆け足でクルーエルの後を追って行った。
1人ポツンと食堂に残った明日香は、大きなため息を吐いて落胆する。
「………人間……か…………」
明日花は自身の手を見ながら呟き、悲しげな表情を浮かべると唇を噛み締めた。
「どうして、彼らを造ったの………政府……………」
* * * * * *
鉄さんの灯台からリュックサックを手に出てきたカインとラヴは、防波堤に腰をおろして海を眺めていた。
「いつ見ても綺麗だね。」
「うん。私、もしこの島から出て行けるなら行きたい場所あるの。」
「どこ?」
カインがラヴを見ながら尋ねると、ラヴは恥ずかしそうに口を開いた。
「ここから見える大きな島、‘日本本土’に東京っていう国があるんだって。そこに大きな塔があるの。」
カインはラヴの言葉を聞き、以前歴史の授業で聞いたことを思い出す。
「東京にある赤い大きな塔……東京タワー?」
「うん。そこの展望台からの景色が絶景って、マスターが言ってた。」
「ラヴのマスターって、百合さん?」
カインが尋ねるとラヴは頷いた。
2人の遥か海の向こうにある本土。カインとラヴは本土を見つめて満面の笑みを浮かべる。
「おっと、失礼しまーす♪」
2人の間にニヤニヤと笑いながらイーズが入り込んできた。
カインはとラヴはイーズを見ると、顔を合わせて大きく頷く。そう、鉄さんの手紙のことを説明するのだ。
「イーズ、話したいことがある。」
「ん?なんだよ。てか、そのリュックサック何?」
イーズはラヴの横にある青いリュックサックを手に取り、中身を確認し始める。
「……お金に地図?携帯電話も………あっ、これ新品のゲームじゃんか!!新しい配給物届いたんだな。」
「配給物じゃない。イーズ、これをとりあえず読め。」
カインは立ち上がり、鉄さんの手紙をイーズに渡した。
イーズはカインの普段とは違う様子を見て察し、有無を言わずに手紙を受け取り読み始める。
そのあとのイーズが、どういうリアクションをとるかは2人には予想できていた。
文を読んで行く度、視線が段々と文の終わりに近づくにつれてイーズの表情は怪訝な顔つきとなっていく。
「なんだよこれ………鉄さん…どこにいる?」
「分からない。だけどこの島にはもういない。多分、本土の方……。」
「どうして俺らに本土へ逃げろと行ってる?」
「分からない。決断するなら時間はないよ。後1時間弱で夕方になる。」
3人は顔を見合わせ、もう一度手紙に視線を戻す。
「………私は………行きたい。」
最初に口を開いたのはラヴだった。ラヴは2人を見ると、自身のリュックサックを握りしめる。
「俺も行くぜ。理由は分からないけど、本土に行ってみたいし。こんな機会ないだろうしな。」
イーズは満面の笑みで言うと、リュックサックを持ってカインに言った。
カインの答えもすでに決まっている。答えは勿論「行く」だ。
「よし。大体の船は5時ごろに港に出入りする。その時、政府の船を見つけて乗り込むぞ。」
「配給物運搬船でも良いんじゃねえか?そっちの方が安全と思うぜ。」
イーズの言葉にカインは一瞬同意しかけたが、首を横に振った。
「そんなこと鉄さんだって分かってる筈だ。だけど、手紙には政府の船に乗れと書いてある。」
「今はこの手紙を信じましょう。」
ラヴとカインはイーズに言うと、イーズは反論もせずに「おぅ。」と言い賛成した。
「それじゃあ、灯台の鉄さんの家で待ってよう。ここなら港を見渡せるし、船も確認しやすい。」
カインはそう言うと、3人で灯台の中へと入っていった。