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- Re: 【これが私達の】KATANA-刀-【生き様だ】 ( No.134 )
- 日時: 2011/08/10 09:28
- 名前: 華京 ◆wh4261y8c6 (ID: MZbMwczL)
残月が居なくなってからどれくらい経ったのか、暗闇の底かと錯覚するぐらいの地下牢に聞こえるのは風の音に、私の息、鳴る鎖。
頼りになるのは揺れる蝋燭の灯。
今が夜なのか、朝なのか、それすらわかんないくらい何も無いこの場所に私は幽閉されていた。
私は思案を巡らせる。
残月の云っていた招待状、あれは恐らく全国の武将に送られている。
なんて書いてあったのか……
思い出すのは蝋燭に照らされた残月の顔。
『相手は【魔女】……どうやら数多の国の領主等と仲むつまじいお前に目を付けたようだ。【魔女】の根城には各領主が来る』
——私、の事……?
『そこで見ていろ。お前の言う『行動』がどのような結果を齎すか……俺は高見の見物をさせてもらう』
耳の奥で聞こえるクツクツ笑う残月の声。
「——……あの時の残月の顔……愉しそうだった……それに、高みの見物って……、ッ!!」
わ、かった……! あれは……!
「くッ」
ガシャガシャ音を立てる手枷が外れない、悔しい。
なんで、なんで!! なんで外れないの!
「早く……早くしないとみんなが……!!」
皆が戦う前に止めなくちゃ、それこそ無意味な死を迎えてしまうだけなのに!
始まってしまったら、もう止められない……!
突如、上の方でした凄まじい爆音が地下牢を揺るがす。
音が音を反響し合ってて空気がビリビリ呼応する。
蝋燭の灯が熱風で消えて本当の暗闇が訪れた。
でも、聞こえるのは階段を駆け降りてくる足音に私以外の息使い。
「おい!」
「雀ッ!!」
「避けろ!」
息を切らして階段を駆け降りて来たのは唐鏡雀。
彼は私の姿を瞳に捕らえると武器を持った人形を操って構え、一閃、横に凪いだ。
しゃがんだ私のすぐ上を刃が空気を切った。
軽やかな音をたてて牢が壊れる。
「無事か?」
「なんとか……ッそうだ雀! 私……陽種さんの所に行かなきゃ!」
「知っている。俺もそのためにわざわざ此処まで来たんだ」
そう言うや否や彼は私を俵担ぎして階段を駆け上がった。
眩しい光りが目を焼く。
「残月め……わざわざ連絡するくらいなら自分が助けろ……」
「え、残月が?」
「あぁ『屋敷の地下に神子がいるから助けろ』ってな」
凄い速さで景色が過ぎていくが雀とと残月の屋敷の人が争った跡はない。
それどころか「見つかって良かったです」と笑顔で見送ってくれている。
なんなんだ、これ。
「みんな残月のお陰だ」
「……残月が……」
じゃあ彼は何のために私を閉じ込めたんだ…?
この先の扉を抜ければ外だ、と雀は呟いた。
フルムーン
(美しい満月の夜に現れるのはヒーローではないのです)