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- Re: 【これが私達の】KATANA-刀-【生き様だ】 ( No.139 )
- 日時: 2011/08/21 17:12
- 名前: 華京 ◆wh4261y8c6 (ID: jklXnNcU)
今宵はなんて月が美しい夜なんだろう、そうぼんやり考えた。
他人からすれば所謂一種の現実逃避だろうが、この気持ちを是非とも察して貰いたいものだ。
飛び交う、血、肉、矢、体の一部、銃弾、砲弾、叫び声。
どこからか馬の声が、大砲の音がする。
人々が身に纏うのは軍服や鎧、それに大きな杖や剣などの武器。
背中に背負って立つは己の信じる国の国章。
交わる罵声に赤に白に黒に茶。
私はアクションゲームが好きだ。
だから、ハマったのはもはや必然だ。
しかしながら、この悪魔の様な腐臭に溢れた場所に来たいとは願っていない。
私が望んだのはみんなが笑顔の面白い世界だ。
死の悪臭満ちる陰の世界ではない。
この世界を生きる彼等にしたら、ただの理想論……否、妄想に過ぎないかもしれない。
しかし、私は信じていたいのだ。
みんなの力なら、この乱世を乗り切れるということを。
だから、今はこの目下で起きてる争いを止めなくちゃいけない。
互いが互いを罵り合って刃を交えている。
相手も見ないで目に付くものを切り付けていくだなんて……
「本当……なにしてんの……!」
手が、震えた。
「——……ッこの馬鹿共ぉぉおおっ!!」
ありったけの声量で叫んだ。
止まってくれるよう、私に気付いてくれるよう。
「……神子……?」
ふと、長身長髪の男が動きを止めた。
その男と戦っていた黒髪に赤いメッシュの入った女が動きを止めて……そして誰も動かなくなる。
「あんた達もう、いい加減にして! この場にいる全員が同じ事を望んでることに何故気付かないの!?」
私は声が良く通るようにバルコニーをつたって屋根の上に上った。
「神子!」
「神子どん! 危なかとよ!!」
「うるさい!」
この高さと風の強さにも慣れ始めたから私は四つん這いから二本足で立ち上がる。
下を見れば、いくつもの色が混じり合っていて、それらは全て私を見ていた。
あまりの高さに地面に吸い込まれるような感覚に落ちいった。
「私は昔から皆が好きだった! 皆の笑顔が好きだった! 私がこの時代に来た理由——それは私の望んだ世界を創るための、最初で最後の可能性に導かれたから!
あっちの世界では私は、雷次と風浪みたいに心から信頼できる家族はいなかった!
言葉を溜め込んでた私の心は荒んでて、一時どうでもいいと思ってた!
だけど、それでも皆は私に優しくしてくれた!
死ぬな、生きろと私に生を促してくれた!!
だから私は皆を救いたいと思った!
皆が言ったように私も皆に生きてほしい!
それが私の信念!
今、この乱世を生きる私の生きる意味だった!」
なのに、今こうして皆は傷つき、血を流している。
1番、望んでいない結末を迎えようとしている。
それは私がもっとも嫌って、桜祈が以前言っていた。
『犠牲の上の国』の結末。
それだけはなんとしても避けたかった。
「もう一度問う! 何故戦うの!? 何故この国の頂点を狙うの!? 国の長は一人じゃなきゃいけないの!?」
誰も口を開かない。答えられない。
現実主義者の前で言ったら鼻で笑われそうな台詞。
だけど、生憎私の目下に夢を見ていない奴など一人も居ない。
彼等の願いであるはずの国の平和は誰も手だししなければ良い話なのであって、国同士の関わりとかは関所を無くしてしまえば良い。
「何をややこしく考えているの?……この国々を統一するのではなくて、このまま一つの国にしてしまえば、誰も戦でひもじくなったりしないし命を落とす必要も無くなるじゃない!」
もしかしたら朔夜や鈴にまた戦場を知らぬ者の戯れ事とどやされるかもしれないな。
だけれど私は空想を実現するからこそ生きる楽しみがあるのだと思うのだ。
「……だから私は……!!」
その時
視界が真っ赤に染まった。
ニライカナイ
(何が起きたかなんて解らない)