ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 【これが私達の】KATANA-刀-【生き様だ】 ( No.142 )
- 日時: 2011/09/16 06:35
- 名前: 華京 (ID: jklXnNcU)
雀声がした。
ゆっくり目を開けると、見慣れたテレビの画面に見慣れた廃墟となったビルの真ん中でリリスを抱きかかえる雀がいる。
体を起こして周りを見回すと窓から覗く太陽と照らされたコンクリートジャングル。
ついでに白いタオルと干したばかりの布団。
火にかけっぱなしのヤカンからは蒸気は出ていない。
机の上にはインスタントコーヒー、そしてシフォンケーキが置いてある。
「帰ってきた……?」
立ち上がって手を握ると爪が手の平に食い込んで痛い。そうか、私は帰って来てしまったのか。
皆を救うことも出来ず、あの世の結末を見ることも無く。
原因は解っていた。私は負けてしまったのだ。
魔女との賭けに。
『———……それで私に何を持ち掛けるのかしら?』
『……もし、私が負けたら貴方は私を狙えばいい。ただ、私が勝ったら私を、残月を諦めて下さい。』
『…………、その勝負とは何なのかしら?』
『———…全国の英雄達を私が説得できるか、否か。』
私は負けてしまったのだ。
誰でも無く、神埼美月に。
私は彼女を説得できなかった。
奇襲を起こしてしまったのだ。
だから、私は刺された。
魔女にあっちの世界の私は殺されてしまって帰ってきた。
渇いたわらいが込み上げてくる。
「ク、ハハ……私も所詮偽善者ね……!」
結局、理想を言うだけで終わってしまったではないか。
結局、誰も救えぬまま終わってしまったのだ、偽善者と罵られて当たり前だ。
『リリス、俺とともに行くぞ』
そんな雀の言葉で現実に戻った私はWiiの電源を落とした。
テレビが黒くなって私はテレビの主電源を切る。
台所でまだ沸騰していないヤカンの火を止めてついでにサランラップに手を伸ばした。
シフォンケーキにサランラップをかけると、私はリビングに背を向けて寝室へ向かう。
まだお昼にすらなっていない時間だが、酷く疲れた。
それに、
私は一度足を止め視線を下げる。
「……………」
今、KATANAをやる気が起きない。なんだか涙腺が緩くなっているようだ。
みんなの笑顔を思うと視界が濁る。
流れた涙を拭って私はベットへ潜り込んだ。
夢幻の如く也