ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

桜花スワロー ( No.25 )
日時: 2011/05/12 15:50
名前: るりぃ ◆wh4261y8c6 (ID: CbXJUujt)

戦争があちこちで起こっているというのに、活気があってみんなの笑顔が生き生きしている町。
此処は何もしない警察や軍を追い払い、自由を尊ぶ救世主と言われている久断 桜祈が収める町だ。
薄い桃色の髪を右耳の下で結い。
漆黒の瞳と中性的な容姿、そして標準より少し小さな体で訓練された兵士や警察をなぎ倒す姿は風のようで、普段は特徴となる桃色の髪を隠して町を行き交う群集にまぎれている。
彼は銃使いで、遠距離から攻撃できるのでよくつかっていた。
一番最初にレベルマックスになったのも彼だった。
最新作、KATANA4ではリストラされるかもしれないという情報に嘆いたものである。
最新作はまだ公式サイトがやっとキャラ紹介が数人出てきたところだ。
まだよくわからないのである。
ため息をつくと、黒い外套を被った人物が見えた。
背中の部分には桜の模様。
おいおいそんな分かりやすくていいのか久断 桜祈。
私は桜祈の左側に回った。
そして小さく呟く。

「久断 桜祈さん。お話があります。お時間よろしいですか?」

自分にも聞こえるか聞こえないかの声。
それでも彼には届いたらしく、彼は驚いたようにこちらを見つめると私の手をとってとある建物に向かった。
ほぼ風に乗ってとばされるような感じで走っていたので苦痛は感じなかった。








此処はビルの屋上。
下には行き交う町の人たちが見える。
私はそれを無言で眺める桜祈に問いかけた。

「桜祈ってよんでいいですか?」
「……好きにしろ。」

雀と同じ返事に笑みを漏らす。
怪訝そうにこちらを見つめる彼に、私はなんでもないと首を振ると、彼に近寄り、フードを外した。
彼の桃色の髪が零れる。
漆黒の瞳をひたと見据えて、唇を動かす。

「桜祈はさ、苦しくないの?」
「——……何を言うかと思えば、」

そう言って彼は苦笑する。

「だって、縛られてるじゃない。」

私は何も無い空間に手を伸ばして眼を細めた。
愛を注いでくれた人が幼い頃に焼死して、殺人犯を見つけ憎悪のままに人を殺し、軍や警察に悪と罵られ、自己嫌悪に縛られて。

「自由は、必要じゃないの? 戦いなんかより、ずっと、ずっと」
「……俺は自由が好きだ。」
「だったら……!」

戦なんか止めてと言葉を続けようとしたが、その言葉は彼自身の声に阻まれた。

「確かに俺は、多くの罪を犯した。……なんの罪もない人を殺して、裏切り……揚げ句、残った多くの人の命を救う手立ても見当たらぬ……。
だからに俺を救世主と信じる民衆には悪いと思ってる。俺を尊敬し、俺を敬い、崇め奉り、信じている人が、俺がそのように持て囃される程偉大な人では無いとも知らない。」

彼が薄く笑う。
彼の視線の先にはどこより賑わう町が見えた。

「だけど……俺は唯一残る民を守らねばならない。数多の民衆を纏めるには力がいる。力を恐れ、国を襲う国がある。……多少なりともいずれは主が守らなきゃと思ったはずの民が飢餓に怯えて、血を流して死に絶えて逝く。俺にそれは耐えられない。」

成果には犠牲だ、と彼は呟いた。
彼は興味対象外には冷たいといわれている。
でも私はそうじゃないと思う。
だって彼は民衆をこれほど大切に思っているのだから。
ああ、彼が飄々としてるのを見る度に、彼が自分の心を押さえつけてしまわないように、と願うことしか出来ない自分が腹立たしい。













桜花スワロー
(犠牲をださねば済われない そんな世界なら要らない)