ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 陽光ブラザー ( No.34 )
- 日時: 2011/05/12 15:52
- 名前: るりぃ ◆wh4261y8c6 (ID: CbXJUujt)
「お茶が美味しいですね。」
風浪さんがのんびりと言う。
改めて言おう。
雷次と風浪さんは、双子だ。
もう一度言おう。
彼等は双子だ。
信じられないかもしれないが双子だ。
どうして双子なのにこんなに違うのか。
不思議でたまらない。
風浪さんは日焼けした肌にスキンヘッド、顎の髭が特徴的だ。
雷次は顎ひげがなく額に×印のある事意外は風浪さんと一緒なのだ。
外見はそっくりだというのに、何故中身はこんなにも違う。
それがゲームの制作会社の狙いなのだろうけど。
彼等は拳で戦う。
大きな振りで大きな威力が雷次、スキの無い動きで沈めるのが風浪さん。
私の前戦った時の彼等の顔が泣きそうだったのを覚えている。
「……、風浪さん。」
「なんだね?」
「貴方はお優しいですね」
「そうですか」
そう言って彼は屈託のない笑顔を見せた。
頼もしい笑顔に私も思わず笑顔になったが、私は改めて表情を引き締める。
「貴方はお強い」
「うん? そうか?」
「しかし、貴方は恐い。」
「…………」
私は静かに下を見た。
畳は新しいものに変えたばかりなのか青々としていて、い草の香りが鼻をつく。
視線を滑らせれば柱が見えた。
柱も彼等が作ったものなのだろう。
つるつると表面が滑っている。
「貴方はお強いのだから、私になど本当は構っていてはならない。私は貴方が恐い、私は貴方が恐ろしい、
私は貴方など」
「———……何を、無理しているのですか?」
ハッと顔をあげれば先程とは違う父親のような——彼はまだ17で、私の方が年上だけど——笑みを浮かべて小さく首を傾げる彼の姿が目に映った。
でも、違う、ダメ。
「私は別に……無理してなど……」
「誰に何を云われたんですか?」
真剣な声音と眼に目が離せない。
嗚呼、貴方には全て隠すことは出来ないのですね?
それが何だか嬉しくって哀しくって、私は再び顔を俯かせた。
もう、どうにでもなれと重い口を開く。
「実、はとある筋から仕入た情報なんですけど、私の事を狙ってる人間がいる、と」
それが誰だかは解らない。もしかしたら勘違いかもしれない。
「私が此処に入り浸ってるから此処が狙われるかもしれない。また、戦いがおこるかもしれない。」
そのせいで誰かが傷つくかもしれない。
もしかしたら雷次が負けてしまうかもしれない。
もしかしたら雷次が死んでしまうかもしれない。
風浪が屈服してしまうかもしれない。
「もしかしたら……」
「おそらく、という言葉は。」
風浪さんがゆっくり口を開いた。
「仮定の時に使う言葉ですよ。仮定は、未来です。」
「安心してください、」
風浪さんは頼もしく微笑むと私の頭をめちゃくちゃに撫でた。
「貴女は私達が護りますから。」
陽光ブラザー
(貴方が優しいのは百も承知。私が貴方を利用しているみたいで何だか嫌だった)