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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 【大勢に読まれなくても】KATANA-刀-【それでも、私は】 ( No.55 )
- 日時: 2011/05/20 22:05
- 名前: 華京 ◆wh4261y8c6 (ID: 2h9idj6y)
- 参照: るりぃ改め華京!心 機 一 転 !
「貴女は何も見えていませんわ。」
「かと言う貴女も、何も見えていない。」
私は静かに目の前の女性を睨み付けた。
無茶苦茶だなんて言葉は通用しないだろう。
ただ、静かに彼女は体に付けた爆薬を詰め替えていく。
少し色褪せた畳の上に転がるソレの量に私は思わず眉を寄せた。
「死体が残るのは、好きではありませんの。」
「有終の美ってヤツ? はっ、馬鹿じゃないの?」
ありったけ嘲りながら私は一つ、爆薬を手に取る。
紙で包まれたそれは何一つ変わる事なくその機能が使われる事を今か今か、と待ち焦がれていた。
「気高く死を着飾ってるヒマがあるなら精一杯生きて見せなさいよ百合原雛菊。」
「残念ですわ、貴女とは解り合えなさそうですわね。
乱世を生きる身としてはいつも、自身の死を予期せねばならないのです。」
自嘲気味の笑顔に私は舌打ちして爆薬を一つ握り潰してみる。
手に粉が沢山付いた。
「貴女とは、違うのですわ。生きる意味も、覚悟も、決意も……全てが、ね。」
胸底に響く女にしては少し低い声はうっすらと悲しみを称えている。
私は軽く唇を結ぶと爆薬を戻して一歩分後ろへ下がった。
「たしかに違うけど」
私は貴女を理解できるわけないし、貴女は私を理解できない。
だって私は貴女ではないから。
だって貴女は私ではないから。
でも、
「だからこそ、言える事だってあると思うの。」
「ふん……まったく……貴女には呆れたものですわ。」
死際クラウン
(死際でも希望を捨てて道化をするというのですか)
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