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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 【これが私達の】KATANA-刀-【生き様だ】 ( No.82 )
- 日時: 2011/06/22 06:58
- 名前: 華京 ◆wh4261y8c6 (ID: ThA8vNRQ)
「願うだけじゃ、何も、変わらない……」
「だから、行動というのか」
手首の縄が食い込んで痛い。
目の前で冷酷な笑みを浮かべた彼を私は見つめた。
何て光のない瞳と世界。
まるで貴方の心のようだ、と私は一度身を震わせた。
今まで一度も感じた事のない冷たさを感じたからだ。
「それで俺に神崎を殺せ……と」
「殺すんじゃない……この辺りで一番美月に近くて力があるのは残月だから……」
【魔女】に近づく前に美月を止められるのは、と続けようとしたが無駄だった。
首筋に突き付けられた刀を伝って血が流れる。
傷つけられた事よりも、彼が武器をもったことに驚いた。
「図にのるな。」
低く呟かれた声。
彼の瞳は細く、鋭い。
「俺がお前を信じるとでも思ったか? 愚かだな……」
ゆらゆら揺れる蝋燭の火が彼の陰を、顔をゆらす。
「もしお前が神崎の間者だとしたら? 【魔女】の間者だったら?
———信用ならないな」
心底呆れた声音の彼はすっ……と音も無く身を後ろへ引いた。
銀の刀に鮮やかな紅がつく。
「——……俺に招待状がきている。」
不意に話が変わって私は眉を寄せた。
「相手は【魔女】……どうやら数多の国の領主等と仲むつまじいお前に目を付けたようだ。【魔女】の根城には各領主が来る」
そう言って彼はくるりと背を向けた。
彼の質素な服がが空気を叩く。
「そこで見ていろ。お前の言う『行動』がどのような結果を齎すか……俺は高見の見物をさせてもらう」
ククッと喉で彼は笑って牢屋から出た。
まって、貴方は何を云おうとしている!?
「残月ッ!」
「俺等を止めたければ」
彼は立ち止まる。
「願いの力とやらを見せてみろ」
そう言い残して彼は地下から出て行った。
ラストムーン
(それは 明け方の三日月に良く似ていた)
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