ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: グリム・リィーパー ( No.2 )
- 日時: 2011/04/08 18:34
- 名前: 藤 ◆wh4261y8c6 (ID: SHYi7mZj)
SCENE 01
その少年は周囲から浮いていた。
性は赤木、名は三郎。
傍目にでも分かる紫苑の髪、紅蓮の瞳は人間のそれとは言いがたい容姿である。
そんな事は三郎自身も重々承知していた。
だがこの容姿の事を母に尋ねれば、彼の母親は僅かばかり困ったように眉を下げ、「貴方はあの方との特別な子なのよ」と微笑むだけだった。
彼の母親は艶めく黒髪に射干玉(ぬばたま)のような漆黒の瞳。
どう履き違えても三郎の母親であるとは言い難かった。
それでも自分へ愛を注いでくれる彼女を、三郎は自分の母親だと信じてやまなかった。
幼い頃は自分と他の違いに気をやり、どうして自分だけがこのような姿なのかと母に何度も尋ねた事があった。
しかしその度に寂しそうな笑みを向けてくる母親を見ていた三郎は己が母に尋ねる事で母を苦しめてしまうのではと気を揉むようになり、いつしか容姿の事はついと聞かなくなった。
ある日の事。
三郎は何時ものように学校指定のリュックを背負い、片手に携帯を持って弄りながら通学路を歩いていた。
彼の異彩な髪色と瞳に周囲の者は遠めに三郎を見やるだけであった。
と、そこに髪を、金色に染め、制服を着崩している青年と、制服を着崩し、一度染めて飽きたのか黒髪に茶髪が埋もれた髪色の少女が近寄った。
「おい、三郎。どうしたんだよ。辛気臭ぇなぁ。」
その声に三郎はふと足を止め彼等をみやるとゆるりと微笑んだ。
「いや、なんでもないよ、カツ。唯、今回の修学旅行先って、つまらなさそうだなと思って。」
その言葉に少女が三郎の右肩に頭を乗せながら三郎の手元の携帯をみやる。
『————信じる心、それこそがこの世でもっとも尊い。祈りは力なり、力は祈りなり。聖地・リーディア、ついに解禁!』
携帯から流れ出る言葉に少女と青年は苦笑し、文句を吐いた。
「そうだね、京都行きたかったー。」
「修学旅行3日間聖地巡礼でもしろってのかよ。死んじまうよな、ねね。」
そんな彼等の様子に三郎も苦笑を漏らす。
『ひ……な……がら……の……われ……お……け……』
何かに気がついたように勢いよく首を背後にふった。
「どうしたんだ、三郎……」
怪訝そうな顔で尋ねたカツを遮って、三郎は恐れるような表情を浮かべつつゆっくりと息を吐いた。
「声……いや、歌が、聞こえる。」
三郎の突飛な発言に二人はきょとんとしたものの、すぐに笑い転げた。
「歌? あはッ……三郎、アンタいつから電波系になったの。」
「気の所為だろ。」
彼等の言葉に三郎は首を傾げたもののすぐに彼等と同じように笑みを浮かべた。
「そうだよね! 気の所為……」
そこから先の言葉は三郎の後頭部に何かが当たり強い衝撃を受けた事により途切れた。