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Re: 俺の日常はどっち? ( No.10 )
日時: 2011/04/10 08:19
名前: ゆn ◆sJpB9ckHBE (ID: XLtAKk9M)

「夜……なげーな……」
従兄弟のお兄ちゃんが心配で寝るに寝れない。
何度も目を瞑って寝ようとしているが直ぐ起きてしまう。
「兄ちゃん……」
そう呟いたとき、窓ガラスを誰かが「コンコン」と叩いた。
驚いた俺は固まった。
でも、ガラス越しに「燐」と従兄弟のお兄ちゃんの声が聞こえて安心した。
「お兄ちゃんっ!」
勢いよく窓を開けると、お兄ちゃんが滑り込むような形で入ってきた。
お兄ちゃんからは、生臭い血のニオイと、薬(ヤク)のような鼻を刺す……気持ち悪いニオイが漂っていた。
お兄ちゃんは俗に言う“瀕死状態”だ。
事は一刻を争うとは知っているが、ベッドに倒れこんでいるお兄ちゃんをどうしたらいいのか判らなかった。
でも、お兄ちゃんが「大丈夫」といったから、俺はその言葉を信じた。

「兄ちゃん……大丈夫……なの? その傷」
お兄ちゃんの身体には、服の上からでも判る様な痛々しい傷跡が残されていた。
誰がお兄ちゃんを俺の家まで運んだのか判らなかったが、運んできてくれた人に感謝した。
「燐……ゴメン……今日に限って守れないとは……」
すまない。そういってお兄ちゃんは謝った。
「お、お兄ちゃんが謝る事なんかねぇよ!」
ほら、頭上げて! そういうと、お兄ちゃんは血で真紅に染まった服の袖で目元を拭いて無理に笑顔を作って微笑んだ。
俺は、お兄ちゃんの微笑が「死」よりも嫌いだ。
悲しい事があるのに無理して笑う。
辛い事があっても笑う。
葬儀が執り行われても終始笑う。
その、つかめない笑顔が俺を一番不安にさせる。
一種の凶器であることをお兄ちゃんは知らないんだ。
だから、俺の目の前で普通にこんな表情をする。