ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

プロローグ ( No.3 )
日時: 2011/04/09 23:11
名前: けろ (ID: BL8fZ.Pl)

:1

授業中
公民の教科書であった
凄く綺麗事が書いてある、全くもって素晴らしい
涙がでてきそう

眠くて

私は欠伸をし、自分の窓際の席から外を見る

特に変わらない青空。真っ青
特に変わらない雲。真っ白

私のノートみたいだ

前の席を見ると人がいた。当たり前
ちなみに男子
私はそっと「あの子」の方をシャーペンでぶっさす

「つッ」

勿論あの子は驚く
振り向く
肩をおさえる。当たり前

血がどくどくと流れ、あの子の着ている服に染み込む

「おい、何してる」

小声でそう言って、あの子は私を睨む
私はにやっと笑う

「うはっ」

思いっきりシャーペンを抜いた
ずるっと感触。気持ち悪い
あの子は苦痛に呻く

だが、そこに0.3㍉シャーペン分の穴は開いていなかった
結構グリグリと穴を広げたつもりだったのだが…

服についた血がするすると巻き戻しされ、何事もなかったような綺麗な肌がのぞいている

これが"才能"。あの子の"才能"は再生。

「あのなぁー」

あの子は少し苛立っているようだ
カルシウムが足りないなぁー

「うん、今日も絶好調だね」

素敵な"才能"をニコニコしてそう褒めてあげる
あの子は呆れた顔をした。だがすぐに授業へと集中するため前を向いた

「あの子」の名前…できれば言いたくない
誰にもあの子の名前さえ教えてやりたくない
だって勿体ないし

あの子は私の親友
女子の私が男子の親友だなんておかしいだろうか?

私は満足した気分で今度は教室を見る
クラスメイトが先生が話しているうちに黒板に"才能"でチョークを操り、落書きしている
また違うところではマイクロ級の火を出し、隣の子のノートを燃やして虐めている

皆起用なものだ
先生に見つからないように上手に"才能"を操り、加減している
生まれつき身につき、それをしようし続けているのだか高校生になればもうそれは御茶の子さいさいというものだろうか?

使いこなせるのがもう前提なのだろう

こんな小さなクラスでもこんなに"才能"を悪用しているのに、果たして社会はどれだけ素晴らしいのだろうか

毎日毎日報道は警察と犯罪者の追いかけっこ
捕まえても脱獄。また捕まって刑罰

平和と平等なんてどこにあるんだか

それを教えてくれるのは綺麗事だらけの教科書じゃないや

私は教科書をパタンと閉じてみた
閉じるだけじゃ駄目!しまわなきゃあぁーえいえいっ

私がそんなにばたばた独り劇場やってても、何考えてても、周りは変わらない
授業は進む。残り10分…

自分が深刻に教科書なんかの事を考えているメルヘン少女になった気がした
くだらないな
自分に笑えてきた

自嘲、自重
否定はしません。痛い子です

私はまた教科書を引っ張りだし、授業に集中するフリをした