ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

プロローグ ( No.5 )
日時: 2011/04/10 16:48
名前: けろ (ID: BL8fZ.Pl)

:2

チャイムが鳴った。授業終了
お疲れ様でした

テキトウな座礼をして休み時間

前の席の人。勿論再生能力を持つあの子だが

たくさんの人が集まってくる
男女関係なくクラスの3分の1くらい
私も例外ではない

「ねぇ、リク。さっきゆっこに刺されたでしょ?」
「あ、俺も見た。てか凄くうけた」

授業中の私の動きを見ていた子が何人かいたようで話題にのぼる

「あーあれは痛かった。頭おかしいんじゃないかって思った」

あの子は笑って、もう傷さえない肩をさする

「え?狂ってるって定評をつけたのは君でしょ?思ったんじゃなくて核心してるじゃん。いいでしょ?リクはドMなんだから」

私は気楽に笑い、いかにもふざけているようになだめる

「お前にだけはドMって言われたくないなこのドM!」

あの子はちょっとムッとして返す
子供っぽいなぁーと内心笑う

「うんうんリクは可愛いねぇー」
「どこが?」

言い返すとこが

そう思ったが私は何も言わず笑う。てかさっきから笑いぱなし
頭を撫でるとあの子はもっとムッとして私の手を振り払う

「おーい、リク。美術部のヤツ呼んでるぞ」

教室の出入り口の前で"才能"を使ってじゃれている男子の一人が廊下で呼んでいる本人の代わりにあの子を呼ぶ
廊下でこっちを向き、手を振っているのは他クラスの男子。名前は木下空
あの子と同じ美術部に所属していて、仲が良く、合作したりしている

「あ、はいはい」

あの子はそういって席を立つ

私も一緒に行こうと思った
美術部関係の連絡に関係はないが一緒に行っても構わないだろう
廊下であの子を呼んでいる空は私の友達でもある
あの子の友達は私の友達なのだから

「ゆっこってリクと仲良いよね」

だが、私の行動はクラスメイトの女子。同様にあの子の席の周りに集まっていた人たちのありがたくて素晴らしい話の始まりによって止められた

「そうかなぁー?皆だって仲いいじゃん」

邪魔。話しかけんな
私はあの子と廊下に行きたいんですけどー

そんな内心おくびにも出さず、真面目に考えてるような態度をとる

「いやいや、ゆっこはもっとだよ」
「ねぇ、ゆっこってリクの事好きなの?」

わくわくと顔を輝かせる皆さん
すいませーん。ガールズトークは余所でお願いしまーす
正直話にのっていけませーん

「え?なわけないじゃない??」

と、即答

「だよね。なんかそういう関係にはあんま見えないし」
「え?そっかなー?お似合いじゃない??」
「いや、漫才コンビか迷コンビがいいとこかな?」

好き勝手に意見が出る
止めてないのだから別にいいのだが

内心、本当はあの子が好きだった
いや、好きという事を越していると思う。憧れていたし、崇拝していた
あの子のためなら何でも出来るくらいだった

あの子が私に死ねと命令すれば死ねるくらい
一生隷属してもいいと思うくらいその気持ちは歪んでいた

歪んでるからこそいえない気持ちでもあった
そもそも私、奥手だし

それに彼女にならなくても一緒にいるだけで良かった
そう、親友くらい。友達よりちょっと上くらいで満足だった

私の視線が目の前の彼女達からずれる
廊下にいるあの子。そして一人の女子が一緒に笑っている
いつの間にか最初にあの子を呼んだはずの空はいなくなっていた

あの女子も美術部の子。名前は斉藤茶穂
髪の毛ふわふわで、確か触るととっても感触が気持ち良いのだ
背が小さいのがコンプレックスらしい

茶穂もまたあの子の友達=私の友達である
病弱でなかなか学校に来ることができない子で、今日目にしたのも2ヶ月ぶりくらいじゃないだろうか?

あの子は茶穂に対して凄く優しい
幼馴染らしく、手とか繋いじゃうくらい仲が良い
それこそあの子は茶穂のためなら何でもするだろうし、茶穂もあの子のためなら何でもするだろう

時々くる病弱女
早く死ねばいいのに

そう思ってると、茶穂がこちらに気づき、笑って手を振ってきた

あの子もこちらを見る
茶穂と話している時とは違って怪訝な顔を私に向ける
いつものことだが

私はこっそり笑ってそっちへ行く

「おっひさー☆茶穂ちゃん!会いたかったよぉ?いやぁー今日も凄く可愛いねぇ」
「うん!私も会いたかったよゆっこ」

可愛い声でそういう茶穂

死ね。間をおかずにそう思う

私が茶穂の手を握ってきゃはははと飛び跳ねると茶穂も一緒に跳ねる

凄く小さくて華奢な手。今にも折れそう
…折っていいかなぁ?

「あのな茶穂。俺"才能"の再生速度あがったんだぜ?」

それを遮るようにあの子は茶穂に話しかける

「本当!?私なんて全然"才能"使わないからきっとなまってるよ?」
「うーん私もかな?リクはいつも私に鍛えられてるからね!ねぇーそれよりもさぁ————」
「…………」


私は茶穂に話しかける
あの子が嫌な顔をしているが気にしない

この病弱女とあの子が楽しそうに話すより、私が大嫌いな茶穂と楽しそうなフリをして話す苦痛の方が断然良い

「はいはい。ゆっこさんちょっとー」

空が再び自分のクラスに出てきてそれを邪魔した
正式には私があの子と茶穂の邪魔をしているのを空が教室からわざわざやってきて止めた

「久しぶりの再開なんだから邪魔すんなって」
「そだよー?2人の時間にしてあげようよー」

空の隣にいるのは同様に美術部女子。城山恋香

「ごめんごめん。茶穂に会って私も嬉しかったから♪あ、ねぇ昼休み一緒に売店に行こうね?」
「おっけー」「あ、ごめん私用事が…」

空は了承。恋香は断った

「大丈夫大丈夫。謝らないでー☆じゃあ教室戻るね」

私は二人に手を振って自分の席に戻り本を開いた
本はいい。人と話すよりずっとずっと

私は作り笑いしなくてもいいし、顔色を伺わなくてもいい
本にさえ集中していれば誰かに話しかけられることもない

別に私は人が嫌いとかそういうわけじゃない。だといって好きでもない
ただ人間関係に疲れるだけ

私は鞄からお気に入りの飴を取り出し舐める

うん美味しい。あとであの子にもあげようかな