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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: artificial flowers「夢の夢」 ( No.2 )
- 日時: 2011/04/12 21:59
- 名前: 玖龍 ◆7iyjK8Ih4Y (ID: ZTrajYO1)
#1
「紅、早く寝ろよー」
向かいの部屋から聞こえる声に、生返事をして、私はパソコンを打ち続けた。向かいの部屋の電気が消える。もう一度、早く寝ろと声が聞こえた。こんどは返事をせず、黙ってキーボードをたたく。
「返信する」のボタンをクリックし、私はあくびをしてランドセルを開いた。ただいまの時刻、23時。
いつものように、ノートを広げて宿題に取り掛かる。
はじめるのはこの時間だ。
「オンラインタイマー」という、糞幼稚な制限があるのだ。その為、23時までしかパソコンが出来ない。だけど、小説を書けるだけでいいのだ。
このブロックのソフトを、父が入れたときには、このサイトが見れなくなった。「掲示板により、ブロックされています」。
小説は、唯一つの心のよりどころだ。
私は死にたくなった。
そのときに、兄が自分のパソコンを使わせてくれた。
今は使えるようになった。兄のおかげだ。嬉しい。兄は、優しいのだ。
私はノートに、シャーペンを滑らせた。さらさらと、気持ちのいい音が駆け抜ける。
宿題は20分ほどで終わる。兄の早く寝ろコールがまた響いた。
お前も早く寝ろや…。
喉まででかかった言葉を、必死に押さえて、シャーペンを滑らせる。
終わったのは、12時。
明日の準備やらなにやらぐだぐだとやっていると、結局こうなる。
兄はもう寝ている。
——携帯の音がするのは気のせいだろう。
私は、布団にもぐりこんで、考えた。
裏のことを。
私は二重人格だ。
人前では見せない、裏がある。兄貴の前でも出さない、裏の顔が。
最近、考えられないのだ。
靄がかかったように、見えない。裏が見えない。
——もしも、裏が命を絶ったら。
私は怖くなって、目を硬く閉じた。
翌朝私が寝坊したのは、言うまでもないだろう。
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