ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 殺人鬼少女の罪〜罪と罰の呪縛〜 ( No.61 )
日時: 2011/07/20 16:59
名前: クリスタル (ID: d9npfmd5)

『罪と罰の呪縛』  プロローグ

憎い憎い憎い
どうして生きているの?私達をむごたらしく殺したくせに
許すな許すな許すな
そうだ、殺してしまおう いや タダ殺すだけでは許せない
祟れた祟れ祟れ
私達を殺したきみなんて 壊してしまえ


第3章  永遠に覚めない悪夢


 目を開けたら、さっきまでの赤い世界は存在しなかった。その代わり真夜中のようなくらい世界が広がっていた。

 下半身が冷たいと思ったら、自分が泉の中に居た。透き通った水に、変わった形の泉だった。例えるなら、アメーバみたいな形。

「はじめまして、新人悪魔」

 泉の外に立っている、見知らぬ女性が話しかけてきた。18歳くらいだろうか?

「……うわ、不審者。警察呼ばなきゃ。あと、悪魔って何よ?」

「不、不審者!?なんて失礼な餓鬼!まあいいや。そこの餓鬼、こっち来なさい」

 明らかに危ない人。いきなり餓鬼呼ばわりされました。さらには、こっちに来いと?誘拐する気だ。私は、回れ右して その女性から逃げる。

「水の中って動きにくい……」

「ちょ、何してるのよ。逃げるなよ、餓鬼」

 簡単に捕まった。

「なんですか?警察呼びますよ!警察ー!」

「どうでもいいから、こっち来なさいよ」

「警察!わかんないの?ポリス!ポリスメーン!」

 あ、痛い。殴られた。うわ、明らかに人攫いだ。

「あんた、自分が誰だか判る?」

 女性は、変な質問をしてきた。

「親からもらった名前よ?忘れるわけ無いでしょ。えーと……」

 誰だっけ?私って誰だっけ?いや、親にもらった名前を忘れるわけが無い。………思い出せないけれど。

「あなたに殴られて、忘れました」

「ああ、どうでもいい。当たり前ね。悪魔になった人間は、人間のころの記憶は無いもの」

 あ…くま?AKUMA?悪魔?私が悪魔??

「あなたは、人間のころに大罪を犯した。だから——」

「滞在?」

「大きな罪と書いて、大罪!」

 大罪?自分が何者なのか?どんな人生を送ってきたのか、思い出せない。ただ、覚えてるのは、自分の姿だけ。

 無理やりアメーバ型の泉から出されて、大地に立たされた。ふっかふかの普通の土。

 ふと、泉に映った自分の姿を見て、驚いた。

「——だれこいつ?」

「ハァ?自分の姿が泉に映ってるんでしょ」

 そんなわけ無い。こんな赤い瞳じゃ、無かった。こんな白い肌じゃなかった。こんな綺麗な黒髪じゃなかった。こんなセミロングではなく、ストレートロングだったはず。

「ああ、脱毛して、カラーコンタクトして、小麦粉でもかぶったのかしら?」

「なぜ、そうなる。それがあなたの姿よ。さて、新人悪魔。あなたには、名前が無いわね。それで——」

 私は、走り出した。目的地は無い。これは悪夢だ、ナイトメアだ。時間が経てば終わる。覚めろ、夢。起きろ、自分。自分が悪魔になるはずが無い。

「覚めろ、夢!起きろ、自分!!」

 夢なんだ。こんなの夢なんだ。自分があんな美人な姿になるはずが無い。ちょっと嬉しかったけど、ありえない。悪魔なんかになるわけが無い!そういえばここはどこ?どうでもいいや。

「待ちなさいよ、新人悪魔!」

 追いかけてくる、あの女性。夢だ夢だ!覚めろ覚めろ!

「あっ」

 私は、派手に転んだ。こんな転び方するの、足を引っ掛けられた小学生ぐらいだ。……いや、本当に何かに足を引っ張られた。

 違和感のある左足を見ると、鎖が巻き付いていた。

「く、鎖!??なんで!?」

「やっと捕まえた!」

 後ろから、さっきの女性。女性の右手には、鎖。自分の足に巻きついてる鎖と同じ。

 全力で走ってる人の足にどうやって鎖を巻きつける?!夢だ。悪夢だ!何で開かない、まぶた!!

「開いてよ、まぶた!それとも何!?『開けゴマ』的なパスワードが必要なの!?」

「何を口走ってるの。新人悪魔。けして夢なんかじゃないからね?」

 女性の声なんて耳に届かなかった。

「いやだーーーーーー!」

 幼稚園児みたいに泣き叫んでいた。夢であってほしい。早く覚めてほしい。

 もう、夢ではないと、うすうす気付いていたけれど。夢だと、信じ続けた。