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Re: 殺人鬼少女の罪〜罪と罰の呪縛〜 ( No.71 )
日時: 2011/08/24 09:08
名前: クリスタル (ID: d9npfmd5)

『私達悪魔の生きる意味は、人から魂を狩る死神の邪魔をしたり、死神を殺す事なのよ。』

 ウラヌスさんの言っていた言葉を思い出した。

 私以外に悪魔は居ない。だから自分でこの死神を殺さなくてはならない。

 昨日、初めて魔法が使えるようになった自分に出来るだろうか?いや、出来ないなら、自分が命を落とす。

 全力でこの死神を殺せ。


 私は、ゴキブリを2,3匹(素手で)わしづかみ、死神に投げつけた。

「わあああ!?気持ち悪い!ゴキブリを投げるなんて非常識よ!」

「だから何よ!あなたを殺すためなら何でもしてやる!」

 ……流石にゴキブリはもう、触りたくないが。

「この私が悪魔に負けるわけ無いでしょう!?」

 魔力で出したと思われる大きな鎌を持って襲い掛かってくる死神。

 じゃあ、私も魔力を使おう!

「…………?」

 どうすればいいんだっけ?とりあえず死神のいないところで考えようか。

 私は、逃げ出した。

「まちなさいっ!逃げたって無駄よ!」

 またゴキブリを何匹か掴んで、死神に投げた。そのままランナーウェイ。

「きゃああああああああ!!!」

 死神の叫びを背に、とにかく走った。


 いくつもゴキブリの川が流れていたが、踏みつけて走った。まあ、足を振り下ろしたらゴキブリが私を避けて、一匹も踏まなかったのだが。

 隠れるのに丁度いい岩の陰があったので、その陰に隠れる。

「魔法ってどうやって使うんだっけ!?」

 人は、一日に6億の事を覚えるけど、その60%は、すぐに忘れてしまうらしいが、私はかなり大切な事を忘れた。

 思い出せ!思い出せ!確か、ツグミは『普通に魔法、使えろー!って、やれば使えます。ほら、ルキアさんなんて、凍ってしまえー!死んでしまえー!!二度と現れんじゃねー!!!おりゃー!!』と、言っていた。

 普通ってなんだ?死神死ねーって思えば使えるのか?

「あら、こんな所にいたの?苦しまないよう、一瞬で殺してあげるわ。悪魔ちゃん★」

 思ったより早く見つかってしまった。

「失礼な。私にはちゃんとした名前があるのよ?ルキアって言う」

 魔法が使えない、この状況でそんなことが言える自分は、ただの馬鹿だ。

「そう、ルキアって言うのね。じゃあ、首を切り後してあげるわ。サヨナラ、ルキアちゃん」

 死神は、大きな鎌を私の首をめがけて振った。素手で受け止めた。

「……っ…!」

 手のひらに強い痛みが走る。指が切り落とされるかと思ったが、どこも切断されていない。

「苦しまないよう、一瞬で切り落としてあげるって言ったのに。どうせ死ぬんだから、無駄なことはやめなさい。今度こそ、死ね!」

「お前が死ね!」

 魔力を使って昨日と同じ鉈を作り出した。その鉈を死神の顔面に振る。

「あああああああ!!!」

 残念ながら、切れたのは死神の前髪。見事にパッツンと。そのまま残りの髪の長さも揃えておかっぱにしてやろうか。

「ちょっと動かないでね。おかっぱにしてあげるから」

「ちょ、やめなさいっ!おのれぇ…私の命の次に大切な髪の毛をよくも!」

「あら、あなたとは気が合わなそうね。私の命の次に大切なものは、MONEYだから」

「何がMONEYよ!普通に金といいなさい!金と!」

 一般の女性の方々は金が好きだと思っていたが、この死神は違うみたいだ。

「調子に乗るな、悪魔がぁ!!」

「!」

 鎌で足を軽く切られた。激痛のあまり、私はその場に倒れた。

 倒れた所にいたゴキブリがやっぱり私を避ける。

「…痛…」

「死神をなめるんじゃないわよ」

「あなたこそ、悪魔をなめるな!」

 あ、自分を悪魔と認めちゃったよ。もういいか。

 死神の残りの髪の毛も切って、おかっぱにしてみた。

「きゃああああ!!もう,家に帰れないぃぃ!!よくも私の髪を……!!」

 足が痛くて逃げられない。

「最も惨い死に方をさせてやる」

 死ねない程度の傷を負わせて、最後に殺すつもりだろうか?

「おかっぱにされた程度で何?本当に気が小さいわね」

 立ち上がることが出来ないから、死神を倒せない。このまま死んでしまうかもしれないのに、死神を挑発した。

「だまれだまれだまれだまれぇぇぇ!!」

 悪魔になって二日もたっていないのに、もう死ぬのか。サヨナラ、皆。

 「ボトッ」と、音を立て、私ではなく死神の首が落ちた。

「……え…?」

 残された死神の動体から、血が噴水のように湧き出る。

 見たことは、無いはずなのに、懐かしい気がした。

 それにしても、なぜ、死神が死んだんだ?

「危なかったわねー。あなたがルキアちゃん?」

 木の上から、20代前半くらいの女性が降りてきた。

 ロイズと同じ空色の髪の女性だ。しかも、かなり美人。

「私は皆から、ユーラシアって呼ばれてるわ。ルキアちゃんが、迷子になったらしいから、探しに来たのよ。そうしたら、死神と戦ってるあなたがいたのよ」

「ありがとう御座います」

「……立てる?」

「いいえ」

 微笑むユーラシアさんは、軽く女神に見えた。悪魔だけど。

 私は、ユーラシアさんに連れて行ってもらって無事に帰還した。


第4章  決戦、死神 完