ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 森の奥の絶命図書館 ( No.8 )
日時: 2011/04/30 19:53
名前: 萌恵 ◆jAeEDo44vU (ID: Pmy7uzC3)

森の奥の絶命図書館 <第Ⅰ章 絶命図書館Ⅰ>

 「こっち、こっち、こっちだよ——」
 針葉樹の森。
クリスマスの時期になると、光り輝くこの森は、
小夜のお気に入りの場所の一つだった。
どうやら、小夜の大好きな怪談が、この森には在るらしい。
小夜は、経った今、
近くの茂みから這い出して来た三人の友人に手を振っていた。
…応答なし。
しかし、小夜は、それに気づかず、一人で喋りまくった。
「ほらっ、皆、着いたよ!」
「多分、ここら辺に、あの怪談『絶命図書館の怪』に出て来る、
『絶命図書館』が在るはずなんだけど——ん?」
小夜が、やっと、皆が黙りこくっていることに気が付いた。
「あれ?どーした——」
「うっっっっっっさ—————————————い!」
つり目の女の子、萌花が、やっと口を開いた。
しかも、何やら大声で叫んでいる——。
小夜は、ぼんやりと萌花の叫びを聞いていたが、
萌花が最後に、こう叫ぶのが聞こえた。
「あんたはいっつも何かやらかすのよ、見て!
千波が、どんな怪我をしたか!」
その声にはっと気づき、萌花の横に目を走らせた。
居た——。
萌花の右隣に、膝小僧を擦り剥いてしまった千波が座っていた。
傷口を地面に付けぬ様、一生懸命踏ん張っている。
「ヴァ——ごめんね、ちなちゃん」
小夜は、急いで千波の方へ走って行き、
血で真っ赤に染まった膝小僧を覗きこもうとした。
が、遮られた。
千波のすぐ側に居た詩音が、まず、
その背後に忍び寄った存在に気付いた。
それは、十二歳ぐらいの少女だった。