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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 蒼き幻想-アナザースカイ- ( No.10 )
- 日時: 2011/04/23 19:26
- 名前: 玖龍 ◆7iyjK8Ih4Y (ID: ZTrajYO1)
*三 僕の悪魔
緋色の空を見上げて、ため息をつく。
夕方の屋上は、寝転がるとひんやりと冷たかった。
授業中のことを思い出しては、頬を染めて吹っ飛ばす。
少しずつ暗くなる空を見上げて、もう一度ため息をついた。
僕は、立ち上がった。悪魔のお出ましだ。
「あー、気づいちゃった?」
ため息がまた、消えた。
僕の悪魔。
「当たり前だろ?お前が近づくと嫌な感じがする」
「何よそれ、どういう意味?」
「まんまの意味だ。僕は、お前が嫌い。OK?」
僕の悪魔、エミル。
エミルいわく、名前に意味はないそうだ。
エミルは、自称「友樹の悪魔」。
いつから一緒にいたのかわからないが、物心ついたときからそばに居た。
どこでも着いてきて、正直いってうざったい。
どこからともなくぬーっと出てくる。
悪魔というのは、案外にあっているのかもしれない。
「ふん、まあいいわ。帰ろう」
僕は、これ以上はないくらいに嫌な顔をしてみた。
エミルの笑顔が引きつる。
とてもじゃないけど無理。
うん、絶対に無理だ。
「……いい、一人で帰る」
エミルはくるっと、さびた屋上の扉のほうへ向きを変えた。
つかつかと、上履きの音が響く。
僕はまた、動かない空を見上げた。
動かない空を。
*三 僕の悪魔 終
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