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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 蒼き幻想-アナザースカイ- ( No.7 )
- 日時: 2011/04/21 20:36
- 名前: 玖龍 ◆7iyjK8Ih4Y (ID: ZTrajYO1)
*二 頭の悪い友樹君
「きりーつ、れーい」
日直の間の抜けた挨拶にあわせて礼をする。
ガタガタと椅子が喚いた。
担任の川チャンが、太い声で授業を始める。
川チャンというのは皆がつけたあだ名である。
小太りで、可愛いと女子から声が大きい。
正直、僕は先生に可愛いなどと言うのは気が引ける。
ちゃっかり呼んじゃったりはしているが。
僕には関係のないことだ——。
「教科書14ページ、四角一、分かる奴いるか?」
川チャンの声が響く。誰も手を上げなかった。
僕は机にひじをついて、「そういえば川チャンの本名って何だっけ」などとくだらないことを考えていたのである。
そんな僕を、川チャンは狼のような目でにらみつけ、僕の名前を呼んだ。
よりによって、僕の名前を。
「友樹、答えてみろ」
僕は小さく「えっ」といって、仕方なく立ち上がった。
みんなの視線と沈黙。
僕は耐えられず、小さく言った。
「……分かりません」
どっと皆が笑う。顔が熱くなるのが分かった。
僕は座ると、しばらく下を向いて黙っていた。
川チャンの声が響く。
「友樹、コレくらい分からなきゃ高校落ちるぞ」
また、笑い声。
僕には返す言葉も、気力も見当たらなかった。
川チャンが仕切りなおして、皆が静かになる。
僕はまだ、下を向いていた。
*二 頭の悪い友樹君 終
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