ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 怪談話 ( No.120 )
日時: 2011/08/29 12:19
名前: 秋桜 ◆SVvO/z.cC. (ID: ueXHoJNS)
参照: 元、「かりん」です

32「鏡」

「真紀……この鏡は、おばあちゃん達から受け継いだ……」

「わかってるって」

真紀はお母さんの声をさえぎり、鏡を眺める。
まるで本物のような松。美しい花を咲かせている梅。
それを眺めているどこか寂しそうな人々。

「いい真紀?それはね……」

「だからわかってるって。何回も言わなくていいよ」

不機嫌そうに答える。
何回も言われた、この鏡に伝わる言い伝え。
それを説明したいのだろう。
でも、真紀はそんなことはお構いなし。
この美しい鏡が自分の物になると言う事に浮かれていたのだ。

早速顔を映して見る。

其処には蝋のように白い女の人の顔が映った。

「いや!」

真紀は鏡を払いのける。

ガタン……

鏡が机から落ちる。

「コラ!真紀!なにするのよ!」

お母さんが鏡を拾い上げ、様子を確認する。
少し、ヒビが入り、顔の真ん中から割れる形になってしまった。

「これはもう、複製なんてないのよ?どうするの!」

「……じゃないから」

「え?」

「私のじゃないからいいの!」

真紀はお母さんを突き飛ばし、部屋にこもった。

ふと、鏡に目がいく。
鏡は真ん中から割れ、其処にはあの顔が……

「いや!」

鏡を床にたたきつける。
鏡の破片が飛び散り、その一枚一枚に、あの顔が……

真紀は布団に潜り込む。
なんと、布団が鏡になっており、其処にもあの顔が……

「いやぁぁぁ!」

真紀は鏡になった布団をたたいて割ろうとする。
割れず、手からは血が流れる。
それでも、真紀はやめずにたたき続ける。

少しずつヒビが入り、われ始める。
真紀は、本気で殴りつける。
鏡がわれ、破片が顔に襲い掛かる。















お母さんが部屋に入った時、真紀は、体中に鏡の破片を突き刺して……



死んでいたそうです。

何処からそんな大量的な破片が降り注いだのか、まったくわからず、事故として処理されたそうです。


本当の所、鏡を割らなければ真紀は助かったのです。
女の人はおそらく、割るなを伝えたかったのではないでしょうか?