ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 怪談話【お題募集】 ( No.34 )
日時: 2011/05/23 20:22
名前: 涼 (ID: mM51WarG)

始めまして同じく怪談を書いているりょうです。
かりん様のイベントに参加させて頂きますね。
よろしくお願いします。
ちなみにオリジナルですっ!




  #01 ( 真夜中の訪問者 )



「あたしという妻がおりながらね、あなたはろくに家に帰ってこない、何故なら女を作ったり賭け事したり、色んな悪さばかりする人だもの、だけどね、それでも信じてるわ。だから、小料理屋の女中をしながらね、それであたしは覚えた料理を作ったり、掃除したり、色々と頑張ったのよ。なのに、なのにあなたは酷い人よね、あたしを垂れ込ませておいて何よあの娘。あなたはまだ16歳の女子に手を出したのね、その娘さんに綺麗な蝶が舞う黒のくしを買ってあげて酷すぎるわ、あたしには何一つくれなかったじゃないの、それに次にあの19歳くらいの娘さんには、………どういうこと、あんな高価な椿油を買うだなんて、酷い、酷い。酷すぎるわ。あたしは強請ねだっているわけじゃないの、ただ、ただあなたがあたしの元へ帰ってきて欲しいだけよ。お願いだから好い加減にあたしの元へ帰って大人しくなってくれやしやしないんだから。あたしの何処が悪いの、何処がいけないのか、あるなら教えてよ、あたしは絶対にあなたを信じてる、だからあたしを見て『化け物』だとか好い加減なことを言わないでちょうだい、ホントにあなたは酷い人ね、全く世間知らずにも程がありすぎじゃないのかしら、あなたを育てたご両親に一目お会いしたいものだわ。……ああ、もう会ってるんでしたわね、どうも、先程からご挨拶が遅れて無礼申し訳ございません。ですが、しばしお待ちくださいませ。—— ほら、話を戻すわよ。とにかくあたしの元へ帰ってきてよ、好い加減に更生してちょうだいな。もう、まだそんなふざけたことを言わないでおくれ。あたしはちゃんと生きてるわ、何を人を死んでるみたいに全く大のおのこが情けない有様ね、嗚呼、お義母さま、お義父さま、申し訳ございません。無礼でした。ええ? この人の言うとおりと言うのですか、……酷すぎますッ。最初にこの人の柄の悪さに同情してくれたではございませぬか、何故にそのような酷いお言葉を。『許してくれ』とか『必ず罪を償う』とか、先程から何を仰ってるんですか、まるであたしは………幽霊みたいじゃないですか」





遊び癖や賭け事に日々をすごす堕落した生活を送る亭主を支えたある一人の美しい年頃の娘。

その娘はある日、遂に無理な労働がたたり死んでしまった。

でも諦めきれず毎夜毎夜その亭主の元や実家に現われるようになった。

己が死んでることに気付かず、毎晩亭主やその両親の世話をする娘。

だが、亭主とその両親は祟りだと思い込み、早死にしたという………。

娘は今も誰もすまなくなったあばら家で亭主の帰りを待つ日々を過ごしているという。

さてさて、そのあばら家に行くでないぞ。

行けば———。








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