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Re: 怪談話 ( No.55 )
日時: 2011/08/14 12:39
名前: 秋桜 ◆SVvO/z.cC. (ID: ueXHoJNS)

22「真夜中の蔵」(江戸時代編)

「気味が悪ぃ……」

「あぁ……でも……この蔵にお宝がたくさんあるのは下調べ済みだから……なぁ」

男2人の声が丑三つ時の夜空へ響いた。
空には月と星が出ており、少しは明るかった。

「だけどよぉ……おれはごめんだぜ?こんな気味が悪ぃ蔵」

「取り合えずいこうぜ……」

片方の男が男の腕を掴む。
男はしぶしぶついていく。

「うへぇ……中に入ると余計気味が悪ぃ」

其処には、化け物の顔をかたどったお面。
人間の顔をかたどったお面などが多数あった。

「静かに!誰か……来るぞ」

男がもう1人の男の口をふさぎ、物陰にしゃがみこんだ。

「誰か……おるのか?」

よく通る、綺麗な声がする。
その声の主は、色白で、黒々とした髪をなびかせていた。

「お、おい……女だぞ?」

男が小声で、男に話しかける。

「あぁ……脅せば……どうにかなるか?」

「どうするんだよ」

「決まってるだろ?」

男はそう答え舌で口をなぞった。

「誰か……おるのか?」

また、女が声をかける。

「よし……いくぞ?」

「あぁ」

2人の男は一斉に物陰から飛び出し、女を押さえつけた。か、に思われた。

「あれ?女は?」

「いねぇ……」

2人は顔を見合わせ、怯えた。
よく考えれば、此処は蔵。
女など……いるわけが無いのだ。

「逃げようぜ?」

「あぁ」

男が蔵の扉に手をかける。
だが……

「お、おい!あかないぞ?」

「そ、そんなわけは無いだろ?」

2人の男は、蔵の扉を開けようと、何度も壊そうとした。
だが、蔵の扉は頑丈で、壊れる様子が無かった。

「ん?」

男が不意に後ろを向く。

「ぎゃああああ!」

「どうしたん……」

男達は固まった。
なんせ……遠くから、あの女がゆっくりゆっくりこちらにむかってあるいてくるから。

「に、逃げようぜ?」

「ど、何処にだよ!」

「とりあえず……逃げよう!」

男達は慌てて、鍵のついた戸棚へ逃げ込む。
その戸棚は全部で4つ……
男達が隠れたのは一番奥の戸棚だった。

「どこかぇ?」

女の声が響く。
男は叫びそうになる口を押さえ、我慢していた。

「ここかぇ?」

女が一番前の戸棚を開ける。

「いなぁい……ここかぇ?」

二番目の戸棚を開ける。

「いない……隠れても無駄じゃ」

三番目の戸棚を開ける。

「いない……」

そして、男達が隠れている戸棚の前へ来た。
ガチャ……ガチャガチャガチャ……

なかなかあかない。

ガチャ……
扉が開いてしまった。

「其処にいたんかぇ」



———男達がどうなったかは誰も知らない……