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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 怪談話 ( No.60 )
- 日時: 2011/08/15 00:23
- 名前: 秋桜 ◆SVvO/z.cC. (ID: ueXHoJNS)
23「紅い桜」(江戸時代編)
明るい満月が暗い夜道を照らしていえた。
そんな夜道を1人の侍が足早に歩いていた。
そんなとき、どこか悲しげな童謡が聞こえてきた。
———紅い桜が欲しい……
———美しくも怪しげに……
———咲く紅い桜が欲しい
途切れ途切れだが聞こえる聞いたことの無い童謡。
侍は恐ろしくなった。
何せ、こんな遅い時間、幼い子供が外で童謡を歌うなど……到底不可能な話だったからだ。
侍はさっきより足早に道を歩く。
だが、歌はおってくる。
侍は、意を決して後ろを振り返った。
そこには、4〜5歳ぐらいの幼い少女が立っていた。
おかっぱの髪をし、紅い着物を着た少女。
侍は、少女に訊ねた。
「何故、紅い桜が欲しいのだ?」
少女は、可愛らしい笑顔で答える。
「綺麗だから」
侍はさらに訊ねる。
「何処で手に入る?」
「此処だよ」
少女が指差したのは頭上の桜。
侍は頭上を見て背筋が寒くなるのを感じた。
何せその時期は初冬……桜が咲けるような時期ではなかった。
「どうやって手に入れる?」
少女は笑顔で刀を振りかざしながら言う。
「こうやって……」
と……そこで侍の意識は途絶えた。
少女は動かなくなった侍を見て、にっこりと微笑み、木の根元に埋めた。
その桜は今でも耐えることなく紅い花を付けるそうです。
———今でも少女は桜を紅くするために童謡を歌っているのでしょう。
———皆さんは振り向いてはいけませんよ?
もし……振り向いたら———
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