ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 無限エンジン Ep1 3—4 執筆中 ( No.137 )
- 日時: 2012/03/07 13:40
- 名前: 風猫(元:風 ◆Z1iQc90X/A (ID: R33V/.C.)
- 参照: コメは必ず返すです!
Part4
「グーグー」
————人間暦二千十四年七月十六日(朱曜日)八時十五分
本棚に囲まれた一般隊員の部屋より間取りは相当広い部屋。イグライアスのトップ、リーブロの私室だ。
セリスとファンベルンは八時頃彼に呼ばれてここに集まったのだが。目の前には、本を日光避けにして眠る上司の姿。
「殴って良いかしら? セリスさんは確か目の前の馬鹿に呼ばれてここに来た……」
「ベブゥッッ!?」
手薬煉を引き頬を引きつかせ今にも目の前の男に殴りかかりそうな雰囲気を出すセリス。
しかし、その前にリーブロは吹飛ばされた。彼女の横に居る長身の女の手によって。
馬鹿丸出しの奇声を上げながら椅子ごと崩れ落ちる上司を見て二人は目をわずかに綻ばす。
それだけ目の前の男に苛立っていたのだろう。
「いだい……いったぁい! つうぅぅ……何て目覚ましだよ!?」
リーブロは床で苦悶の表情を浮べ奇声を上げてのた打ち回る。無様な彼の姿を見ていると自然と笑みが浮ぶ二人だった。そんな二人をサディストと揶揄しながら彼は立ち上がる。
「よぉ主。今回は少なくともお前が最悪だぜ?」
「本君……文法可笑しい……」
椅子に座りなおしファンベルンに殴られて出た鼻血を拭きながら語りかける相棒の応対をするリーブロ。
その様を見てセリスはまた苛立ちを感じ青筋を立てた。冗談は良いから速く話を進めろと気の短い彼女は言外に告げる。
彼もそれを察したのか神妙な面持ちになり手を組む。所謂偉そうな人のやるポーズだ。
そして、厳かな調子で口を開く。
「なぁー、ファンベルン? カラオケボックス返せ」
「…………」
しかし未だに男は寝惚けているのか阿呆なことを口にする。二人は唖然として一瞬硬直した。
確かに無理矢理カラオケボックスを強奪して昨日からそのままなのだが今は、それは関係ないだろう。
セリスがバンっと力強く机を叩く。
「い・い・か・げ・ん・に……!」
口唇が震える。その震えは尋常ではない怒りを孕んでいて。
「えっ……セリスちゃん……」
リーブロは蛇に睨まれた蛙のように竦みあがった。いい加減に悪ふざけが過ぎたとリーブロは猛省するももう遅い。
「本題に入れ!」
「ガハッ!」
自らの相棒である「本」でリーブロは顔面を思い切り殴られた。口が勢い良く切れたらしく血が放物線を描き吹き飛ぶ。
一瞬意識が吹き飛んだらしく「あっ……がっ」などと悲鳴にならない悲鳴を数秒間彼は上げ続けた。
「…………」
「おっ、目が覚めたなリーブロ!」
しばらくしてリーブロが目を覚ます。始めに声を掛けたのは彼の相棒である「本」だ。
彼は復活してすぐにセリスが目に入ると一瞬目を背け震えだす。あの殴打は彼の脳に大きなトラウマとして残ったのだろう。そして、横面に紅い痕を残す顔自慢を見て結局時間のロスになってしまったとセリスは反省する。
しばらくしてまたリーブロは先ほどのポーズを取り話し出した。
「ちょっとね……君らに休暇をやろうと思ってさ?」
「マジっ!?」「えっ、あたしまだ一回しか任務やってないのに?」
今回は先ほどのような馬鹿げた発言ではない。
やっと話が進むとホッと一息したのも束の間ですぐにセリスの表情は驚愕に変る。
ファンベルンのほうは馬鹿のように喜ぶだけだが、セリスには解せないことが多い。
まだ組織に入って一回の任務をこなしただけなのにもう休暇だなど可笑しいだろう。かのひょは反論する。
「可笑しいかぁ? 今回の任務はインテルが出張ってきたりお前の知己の仲が現れたり……普通じゃなかったぜ?」
「……確かに」
リーブロの言う事は一理有りセリスは黙り込む。そして先ほどから騒がしかったファンベルンもその言葉を聞き静かになった。リコイルは彼にとっても大きな存在だ。
付き合いの長い彼女はそんな大きな存在を失った彼の心情を深く理解できる。
リーブロ自身の心の整理の仕方でもあるのだろう、と彼女は理解し微笑む。彼はそれを見て少し口角を上げた。
「と、言うことでお前等に一日の休暇を与えるから……楽しんで来い」
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