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Re: 気まぐれストリートファイト キャラの名前を一部変更しました ( No.130 )
日時: 2012/04/02 20:01
名前: 白樫 ◆fd.I9FACIE (ID: F.0tKRfu)

〜第44話 二つの『八』〜

「今回は正真正銘の中国拳法同士の戦い!選手は此方!使用拳法は八極拳!漆黒の狼 村雨 崙選手!」
「………。」
「対するは此方!使用拳法は八卦掌!黄金の麝香猫  宗 洲真選手!」
「………。」
「…あれ?何かコメント」
「「さっさと始めろ。」」
「わ、わかりましたよ…レディーファイト!」

二人の気迫に押されてゴングを鳴らす小五郎。
ゴングがなると同時に両者摺足で距離を置く。

「両者距離をおいてます。その辺は中国拳士と行ったところでしょう。」

距離を置き続ける両者。
しかし、沈黙は絶たれた。
洲真は一瞬小さく踏み込むとその後、一瞬にしてロンに向かっていく。

「抱月掌!」

一直線に掌を突き出して攻撃を行う。
ロンはそれを拳で掌を落としさらに拳を鳩尾に向けて構え、寸勁の姿勢を取るが洲真は発動する前に再び距離を置き、回避する。

「ふん…八極拳と聞いて少しは期待していたがその程度のようだな。」
「奢るな…。」

再び構えをとり今度はロンが距離を詰める。
洲真もまた、構えて距離を詰める。
そして互いに掌を突き出した。

「八極打開!」
「龍形八掌!」

お互いに掌がぶつかり合い、周りにも衝撃が広がる。
それを堺に強烈な打ち合いが繰り広げられる。

「此処で打ち合いだぁ!」
「打ち合いだと八卦掌がやや有利ね…ロンはどう対処するかな?」

累加の言葉通り、次第にロンは押されていく。
その時、ロンは腕を曲げて一気に懐に飛び込んだ。

「裡門頂肘!」

懐に飛び込んだあとに強烈な肘を腹部にぶち当てる。
洲真は一瞬怯み、後退するが耐え抜き再び構える。

「くっ…多少入りが甘かったか…。」
「確かに甘かったけど結構効いたぜ…だが…此処で仕留めとけばよかったけどな!」

そう言うと手を握り、拳を作り上げる。
それを警戒したロンは直ぐに防御の構えをとった。

「甘い…甘いぜ!」

そう言って接近して拳を振るう洲真。
ロンは防御の構えでそれを防ごうとする。
しかし、その拳は罠であった。
ロンの目の前で拳を離すと大量の瓢(中国式手裏剣)を飛ばした。
ロンは咄嗟に腕を上げて顔を守るものの腕に深々とその瓢は刺さっていた。

「くっ…暗器か…。」
「御名答だ村雨…中国拳法が肉弾戦だけだと思ったら大違いだったな…。」
「元より普通に戦うとは思っては居なかったがな…。」

その腕に刺さった瓢を抜き、ロンは再び構えを取る。
洲真は懐を探ると今度は刀を取り出した。

「八卦刀か…。」
「一つ言っておく…中国拳法の拳術は武器がないときに行う非常用の物…中国拳法は元より武器術がメインの武術なんだよ…!」

そう言うと刀を構えて向かっていき、刀を振るう。
ロンはそれを的確に捌いて回避していく。

「此処で洲真選手、自らが最も得意とする武器術へと持ち込んだ!」
「まぁ、確かにあいつが言ってることは間違ってはいないわね…半分は。」
「それはどういう事でしょうか?」
「それはロンが説明してくれるわよ…。」

暫く捌き続けるロン。
それを尻目に洲真は攻撃の手を緩めない

「距離詰めれば刃にやられるからなぁ!得意の寸勁は約にたたねぇぜ!」
「………。」

洲真の言葉に特に反応を示さない。
そして洲真は刀を高々と上げる。

「コレで止めだぁ!」

その刀を降りおろそうとしたとき、ロンはその腕を鞭のようにしならせて相手の手の甲に向けて攻撃し、刀を落とさせた。

「なんだと…!」
「ロン選手!此処で意表をついた攻撃だぁ!」
「あれは…劈掛掌の動きね。」
「ひかしょー?」
「中国拳法の一種で嶋選手の通背拳と同じく離れた間合いから攻撃する拳法よ。まぁ八極拳が密着状態で戦うのに対して劈掛掌は遠距離戦って言うこと。その他八極拳には無い曲線的な歩法を持ってたり八極拳とバツグンに相性がいい拳法ね…小五郎はこの言葉聞いたことある?」
「なんですか?」
「『八極と劈掛を共に学べば神でさえ恐れる』って言葉。」
「おーっと此処でロン選手、猛攻撃だぁ!」
「聞いたことないのね。」

その間にロンは間合いを離して攻撃を続ける。
洲真の拳法は接近戦メインであるために苦しい展開に持ち込まれる。

「こっちからも言わせてもらおう…確かに武器術あって中国拳法は成り立っている…だが…武器は手足の延長…即ち徒手を成り立たせなければ武器術も成り立たないと言うことだ…!」
「くそっ…!」

強引に自らの得意の間合いに持ち込み、接近戦へと持ち込む洲真。
しかし、武器を壊された動揺からか、放つ掌に先程のような正確さがなくなっていた。
それをついたロンは攻撃を捌くと一気に懐に潜り込んだ。

「貼山靠!」

背部での体当たりを寸分の狂いも無く洲真に浴びせる。
洲真は強烈な威力になすすべも無く崩れさった。

「勝負あり!勝者 ロン選手!決まり手は貼山靠!」
「所詮はそんなものか…。」

そう言うと客席へと去っていく。

「お疲れ様です〜ロン様〜。」
「当然の結果だ…。」

いつも通りベタベタとくっ付くリイフェン。
そのわきでレオン達は語り合っていた。

「アイツ…また一段階強くなってやがる…。」
「流石はロンさんって事ですね…兄貴は追い抜くことは」
「余裕だよバカ!」
「続いての勝負は此方!レオン・アルファード選手VS矢野 仁三郎選手!」
「仁三郎と言えばあの酔拳の…。」
「あんな酔っ払い余裕だっての…行くぜ!」

そう言って勢い良く会場へと向かっていった。
一方その頃、仁三郎はケータイを片手に通話をしていた。

「おぅ、龍玖の旦那。どないした?」
「予言通り来ただろ?」
「予言的中やで。」
「後は話したとおりだ…息の根を止めろ。」
「正直結構気ぃあったんで心痛むけど高い金貰っとるからなぁ。まぁそっちの望む様にしたるわ。」
「頼んだぞ…。」

そう言って電話を切る龍玖。
そして仁三郎—与作—もまた会場へ上がっていった。

〜第44話 完〜