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　俺はまだ、知らなかったのだ。否、理解が及ばなかったと言うほうが正しいか。
　この世界が、異常なほど歪んでいることに。曲がりくねった空間が、普通と称されていることに。人々の心が歪に変形し、温もりを失い、世界（ここ）に存在するはずのない"愛"を求め、狂い迷っていることに。

　目の前にたたずむ少女は、昼間と全く変わっていなかった。
　闇に沈み込む、その横顔を除けば。

「……それで、いいのか？」

「これこそ、国民達が求めて止まない"慈悲の心"よ」

　違う。間違ってる。こんなの、優しさじゃない。なあ、そうだろう？　お前が一番、知っていなければいけないことじゃんか。何でそんな、逃げるような真似するんだよ。俺はもう、わからない。アイツのことを理解したら最後、今の俺ではいられなくなる。そう、だよな？

　なあ、相棒。聴こえてるんなら、教えてくれよ。

「真実を拒絶し、嘘の世界でしか居場所を見つけられない人間——そんな人間の為に、私はここにいる」


　——嘘でしか人を救えないなんて、ウソ、だよな？


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次章の予告です。第一章はもうちょい続きますよー。