ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- 【第一章】それは少年の奇異論理-01 ( No.3 )
- 日時: 2011/04/25 16:55
- 名前: チェルシー ◆n2c8gXP71A (ID: ofW4Vptq)
———俺は今、何をしているのだろうか?
「ねえねえ母さん、この人、怪我してるよ!」
「まあ……大変! どうしたのかしら、こんなに酷い怪我……?」
会話の内容からして、まだ幼い坊主とその母親が、ぼろぼろに怪我してぶっ倒れてる好青年(俺のこと)を発見し、ものすごーく心配されているようにしか思えない。嗚呼、なんと哀れな好青年(何度も言うけど、俺のことね)なのだろうか。あーめん。
つーか俺、どこにいんだよ。今すぐにでも飛び起きて、現実と俺の状態と親友のその後を確かめたいのだが、気だるい疲労感に押し潰されてしまっている俺は、その疲れに太刀打ちできるほど強くなく。あえなく狸寝入り状態のまま、道行く人の反応を聞いているのだった。酷いんだぜ? ここの人間は。まあ、汚い大人ねー近づいちゃ駄目よーと大人びた声に言われたり、やっぱり苦労してんだなーと要らぬ同情を貰うだけ貰いそのまま放置されたりと、まあ同じ年代の人間達が経験できないような治安の悪いトコロにいるらしく。何だ此処は。日本人はここまで酷くねーだろ!
「とりあえず、司祭様の所に運びましょうよ! 司祭様なら何とかしてくれるに違いないわ」
シサイサマ? 誰だよ、それ。怪しいオッサンのとこにでも連れていかれるのか? ……いやいや、絶対危ないだろ、それ。あーヤバイ。今すぐ起きないと。
「ぁあ……じょ……」
喋れてねー!
「母さん、なんか喋ってるよー?」
「司祭様のところに連れて行って貰えるなんて有難い、どうも有難う御座いますって言ってるのよ、坊や」
いや、言ってねーよ。
せめて、この騒動の行く果てを見届けてから意識が途切れりゃ良かったのに。人生、そんなに甘くないってか。軽々と持ち上げられた俺は、お世辞にも居心地が宜しいとは言えない状況の中、シサイサマの所へ連れて行かれる破目になったのだ。あー、俺、これからどうなるんだよ。つーか意識戻れよ。不気味なまでに開かない瞳。くそっ、何だコレは。俺は何も悪い事なんかしてねーよ。なのに、どうしてこう試練っぽいことに巻き込まれてんだ。……あ、まさか、もしかして。
『これがお前を救う唯一の手段なんだよ、相棒』
結構、仲良かったアイツの声。そうだ俺、アイツに何かされたんじゃんか。
『だから悪いけど、今からお前を———』
アイツ、あの後なんて言ったんだっけ。お前を殺す? いや、だったら俺、今生きてねーし。お前を、生かす? だからなんだよ。お前を、お前を……
———"ト、バス"。だったっけ?
とばす、飛ばす、跳ばす。いや待て親友。違う。大親友よ。とばすって何だとばすって。俺、どこにトバサレタんだよ。あれ、ここ、日本じゃねーの? のっと、じゃぱにーず? 英語なんか知らねーぜ! ああ、自慢にもなんねーし。ここ、地球なのかなーとかなんちゅう心配だよ自分。でもなあ。アイツ、人間とはかけ離れてたからな。異世界ですてへっとか言われても納得できないわけじゃないんだよなーうんうん。
ん? 異世界、とか?
「……んなの有り得るかあああああ!」
「うおっ、目を覚ましたぞー」
そこでまた、意識が途切れちゃう俺。くっそ、か弱すぎるだろ。あー、でもなぁ。
叫んだ時に見えた空。どこまでも澄んでいて、それでいて儚くて。日本とは思えないほど異世界チックな、綺麗な青空だったんだよなー。否、男である俺がそんな乙女チックなことを感じたなんて信じられないけど。アレだな、本能が綺麗だって言ってるんだ。異論は認めん。
に、しても。
(腹、減ったー……)
……。暢気だとか言ったヤツ、前出ろ。前だ。