ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 〜アビリティワールド〜 ( No.26 )
- 日時: 2011/05/04 02:25
- 名前: 崇 遊太 (ID: BZFXj35Y)
〔4.花火〕
─生徒会執行部─それは超能力高等専門学校にも存在する部活である。
現在ワケありで会長不在の生徒会を仕切っているのは、2年生副会長の日向龍一であった。
スッキリとした短髪,キッチリとした制服姿,常時身に付けている胸ポケットの生徒手帳と生徒会バッジ。
周りの生徒や教職員曰く、「生徒の鏡」。
「お疲れ様です。」
生徒会執行部の役員である光は、挨拶をしながら生徒会室に入室した。
奥にある副会長専用の席には龍一が座っており、手前の6つのデスクには2人の女子生徒が座っていた。
「お疲れ白石君。さっそくだけど、使いで今度の文化祭で使う小道具の確認をしてきてほしいんだけど……」
生徒会で書記の役職に就いている東雲鈴は、一枚の資料を光に渡しながら申し訳なさそうに頼む。
「全然大丈夫ですよ。それじゃあ、パッパッと行ってきます。」
光は笑顔で資料を受け取ると、荷物を自身のデスクに置いて生徒会室から出て行った。
「仕事熱心で優秀だな、彼は。」
龍一は手元の書類に書き込みながら、鈴に向かって言った。鈴は笑みを浮かべて頷く。
「副会長を彼に任せて、あんたが会長すればいいじゃん。」
鈴の前に座っている会計の役職に就いている祁答院継葉は、電卓を器用に使いつつ龍一に言い放った。
「それはまだ決めれん。それに会長は病と生徒会の仕事と受験の3つを励んでいるのだ。勝手なことはできない。」
「奈木会長も大変だね。ま、あんたが副会長じゃなかったら今頃生徒会は潰れてるよ。」
継葉は電卓をカタカタと鳴らし、‘0’のボタンを強く押して一息ついた。
「おっしゃ、今日のノルマ達成。」
継葉は背伸びをして立ち上がると、生徒会室を出ようとする。
「どこに行く?お前個人の仕事は終わっても、まだ全体の仕事は終わってないぞ。」
「息抜きだよ。」
継葉は龍一にそう言うと、生徒会室から出て行った。
* * * * * *
校舎の横に建つ2階建ての古い建物。
文化祭等の小道具が積まれた倉庫内は床が埃に埋まり、壁の塗装が剥がれてコンクリートが剥き出しである。
案の定、観音開きの扉を開けた瞬間に埃が空を舞う。
「ゲホゲホッ………汚いなぁ……眼鏡外しとこ。」
光は眼鏡を胸ポケットにかけ、とりあえず辺りを見渡した。
1階には文化祭で使用する組み立て式屋台,飾り,とにかく多種多様な小道具が無造作に置かれている。
「これは結構時間かかるな〜ぁ。地道に終わらしていこう………」
光はボールペンと鈴から渡された資料を手に持ち、ため息を吐きながら小道具を確認する。
広さは教室2つ分。その広さにギッチリと収納されている小道具を1人で確認して行くのだ。
ため息が出るのも無理はない。
バタン………─────
「え?」
開けていた扉が勝手に閉まる。大きな音が倉庫内に響き渡った。
光は不審に思い後ろを振り向くと、薄暗い暗闇の中に誰かが立っている。
「誰ですか?ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ。」
光は眼鏡を掛けながら、数メートル離れた相手に言った。
眼鏡をかけると、より鮮明に暗闇の中に立ち尽くしている人物の姿が見えてきた。
スカートに赤茶のロングヘアー。目の前にいたのは、見覚えのある人物だった。
「堺………さん…ですか?」
暗闇の中から花火が現れ、不気味な笑みを浮かべて光を見つめる。
「あなたは賢いし、そこらの愚民共より知識もある。だから生かしておけば、勘付かれる可能性もある。」
花火は唐突に何か話し始めると、右手からカラフルな火花を出し始めた。
光はその光景を見て驚くが、冷静にペンと資料を床に置いて、持ち合せていたナックルダスターを装着する。
「どういうつもりですか?授業以外の戦いは、校則で違反ですよ。」
「あんたそう言えば生徒会だったね。私を取り締まる?ま、無理な話だけどね。」
色鮮やかな火花を散らしている両手を光に向ける花火。
「倉庫で謎の爆発事故。生徒1人が重体……てことで、宜しく。」
パン!!
花火がニヤリと笑った瞬間、銃声のような音と共に花火の両手から2発の火の球が発射した。
「………しまった?!」
光はこの時、自身がすでに追い込まれていることに気が付く。
光が入ってきた扉以外に倉庫から出る方法はない。窓は換気用にあるだけで、抜け出すことは不可能だ。
それに、避けきれたとしても花火の超能力は名前の通り「花火」。
このような場所で2発の花火玉が弾ければ、爆発事故に発展することは間違いない。
「んじゃ、バイバ〜ィ♪」
花火は光に手を振り、颯爽と倉庫から出て行った。
─向かってくる2発の花火玉─
─逃げ場のない倉庫の中─
「そん…………な……………」
光は2発とも簡単に避けた。
しかし、花火玉はそのまま光を通り過ぎて壁にぶつかった瞬間、眩く発光した。
夕日に照らされた高校に爆発音と凄まじい轟音が鳴り響いたのであった。
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