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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 終焉の歌姫が謡う時 4/26 23:34up ( No.17 )
- 日時: 2011/04/27 22:34
- 名前: 玖織 ◆Kqe55SnH8A (ID: hYVgID.t)
街の外れにある閑散とした丘で、溜息が漏れた。
この月を見ているのかな? 少しだけ寂しくなった。
アレンは昼に2人と別れてから街をブラブラしていた。右手には、少し重めの小さな袋が3つ。この丘に来るまでに、3人の帝国軍兵とぶつかった。どれも、市場にいた女や孤児から奪い取った物だった。
「……っ!?」
何かを感じ、振り向いた。視線の先には金髪の男。少し怒った顔で、こっちを見ていた。
「シエン兄さ、」
「アレン、今だけ怒らせろ」
「……ぇ、」
いつもの彼とは違う、何かとても重い物を背負ったような、とても悲しそうな声だった。思わずアレンは息を飲んだ。ごめん、帰ろうか! それだけじゃ終わらなさそうな雰囲気だ。気まずい空気が2人を包む。
「なあ、お前、今日何した?」
その言葉への反応は求めてないだろう。アレンは黙っていた。
「ベテランのナイトホークでも行かないようなあの屋敷に、単独で行ったよな? 何の準備も無しに、『モーラン帝国軍総長』の屋敷に侵入したよな? しかも俺には只のストレス解消に見えた」
「……ん」
「なら聞け。盗みは遊びじゃない。こんな事可笑しいけど、俺らが生きていくための大切な『仕事』なんだよ。……俺もルルーも、お前にはまだこんな事して欲しくなかった。分かってただろ。なのにお前は、俺達の気持ちを踏みにじった」
「ちがっ……!!」
アレンは否定した。
「何が違う? お前は単独で無目的に屋敷に侵入して、警備兵に捕まりそうになった。俺とルルーも危なかった。違うか?」
「……違わない。けどっ…!」
「だったら、」
そう言ってシエンはポン、とアレンの頭を軽く撫でた。思わず涙が出そうになる。
「お前が思った事、言ってみろ」
にっと笑ったその顔はもういつものシエンの顔だった。
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