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Re: 終焉の歌姫が謡う時 4/27 22:39up ( No.18 )
日時: 2011/04/28 20:46
名前: 玖織 ◆Kqe55SnH8A (ID: hYVgID.t)


「……昨日、」
 そう言ってアレンは息を吐いた。シエンは何も言わずにしゃがんだままアレンの目を見ている。
「屋敷の裏のとこで、帝国軍隊長と誰かが話してるのを聞いたんだ……」
「誰か? それって、」
「私も聞きたいわ、アレン。それって誰なのかしら?」
 静かに現れたのはルルーだった。月光に紫色の髪が映える。
「ルルー、いたのか。……じゃあアレン、続き、話してくれ」
「うん…」

 昨日の夕方、アレンは買出しの為に市場に訪れていた。少しずつ沈んでいく夕日は遠くに見える海に反射している。
「———……」
「?」
 丁度、アレンが例の屋敷の角を曲がり、裏路地に入ろうとした時の事だった。誰かの声が聞こえた。2人いるようで、片方は聞き覚えのある声だった。モーラン帝国軍隊長その人。もう1人は……。アレンは恐る恐る覗いてみて、それからすぐに顔を引っ込めた。
 黒ずくめの格好をした男だった。サングラスをかけ、黒いフード付きのパーカーを着ている。黒いパンツに黒いブーツ、フードから覗く金髪が妙に気になった。
 アレンは耳に全神経を集中させた。
「……だから、危険すぎるって言ってるだろ!」
 黒い男が突然声を荒げた。
「これしか方法がないんだ! 他に手段があるのか?」
「っ! だけどな、ユーリ!」
「もうこの話は終わりだ、ザジ!! 明日の夕方、盗賊ギルドのアジトに火を放つ! もう決まった事なんだ!! ……———!! …! …、……」
「…! …——!?」
 残りは聞いていなかった。
 ユーリはモーラン帝国軍隊長の名前、ザジはきっと黒い男の名だろう。
 ————そんな事はどうでもいい。

『明日の夕方、盗賊ギルドのアジトに火を放つ!』