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Re: 終焉の歌姫が謡う時 5/5 23:30キャラup ( No.32 )
日時: 2011/05/06 22:58
名前: 玖織 ◆Kqe55SnH8A (ID: hYVgID.t)


 砂利が跳ねるのを全く気にせずに駆ける3つの影は月明かりを浴びて青白く輝いていた。
「ギルドが…!!」
 アレンの悲痛な声が響く。煌々と燃える火炎はアレンたちの家とも言えるギルドを飲み込んでいた。
「このッ!!」
「…! 待て…!」
 飛び出そうとしたアレンをシエンが制す。
「何で、兄さんっ!」
「1、2…5…くそっ。誰かいるけど…うがあっ! 一体何十人いるんだ!?」
 アレンとルルーは目を凝らした。見えるのは炎ばかり、否、確かに影が動いている。
「…ルルーは此処にいて魔術で援護してくれ。アレンは俺の傍にいろ」
「ん」

『俺らは向こうでお前が動くのを待ってる。ルルーのタイミングでやれよ』
 ルルーは1人で軽く笑った。私のタイミング、ね。あなたはいつも私の事を待たないくせに。
 炎はもう鎮まってきていて、あたりは再び闇に包まれようとしていた。
 ———…そろそろ、ね。
 影が1つの場所に集まったのを確認したルルーは、先刻アレンから受け取った『神々の聖杖』を軽く握った。
「ドラゴンフレイム! 連鎖魔法コマンド、チェーンライトニング!」
 言下に地面が赤く変化した。灼熱を放ち溶岩のように泡立つその地面から何かが這い出した。まず紅い鱗の欠片、そして金色の瞳。翼も身体も尻尾も、全部。全部。全部。
 全身に金色の炎を纏った真紅の龍。先刻の自然の火よりも、その魔術の火は赤々と漆黒の空を染めた。
「…———!!」
「…っ!? ———!!!」
 影が慌てふためくのをルルーは感じ取った。もうアレンとシエンが彼らの中に混ざっただろう。
「ド…ドラゴンだあぁぁぁぁああ!!」
「うわあぁぁぁああっ、こッ…殺されるゥ!!」
 突然聞こえてきた声は聞き覚えがあった。集団の敵をいかに撹乱することが勝利への近道だ。何かの本に書いてあったのを思い出した。

「キララララララッ!!」
 火龍の咆哮が天を突いた時、ルルーはロッドを振り、連鎖魔法・チェーンライトニングが発動させた。瞬間、溶岩と化した大地から、突然巨大な雷柱が空へ伸びた。
 再び悲鳴が飛び交う中、火龍は口を開けた。身体を覆う炎はついに雷をも帯び、その光はもはや悪魔のように龍を照らした。口内に覗く、たくさんの牙の奥に火炎が溜まり始めた。バチバチと電気が爆ぜる音もする。
「グラララララララッ!!!!!」
 火炎の咆哮とも形容するべきか。人類の力を超えたその力に影は為す術も無く少しずつ森に消えていった。
 最後に4つの影が残った事を確認したルルーは、天空を焼き尽くさんと炎と雷のブレスを吐き続けていたドラゴンをロッドを掻き消した。