ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 終焉の歌姫が謡う時 オリキャラ募集中! ( No.49 )
- 日時: 2011/05/28 23:29
- 名前: 玖織 ◆Kqe55SnH8A (ID: hYVgID.t)
4人が階段を降りる音が響く。
ルルーの指先から発せられる微かな光はパチパチと音を立てている。シエンはロングソードの柄を握っている。それだけでアレンは緊張しているのに、幼いマリアを守らないといけないという使命があり、その身体はガチガチにこわばっている。
…———カタン、——…
「ッ!?」
丁度階段を降り終わり、部屋に入ろうとした時だった。何かが動いた気配と共に物音がした。即座にルルーは右手から得意とする火炎系魔法を発射し、シエンは剣を抜き放った。ルルーの出した火球を追うようにシエンが叱声を放ち部屋に入り、剣を横薙ぎに振った。
金属同士がぶつかり合う独特な音が響いた。
「……お前ら、何すんの」
虹色の光りが包むのは青い髪の男。シエンを睨む鋭い光は彼に剣を下ろさせるのに十分で、その漆黒の双眸からは瞬間的に殺気が放たれた。翻る黒いマントに掛けているゴーグルが蝋燭の火を反射しアレンの目をくらませた。
「キールさん! いつお帰りに!」
かろうじてこの殺気を放つ黒マントの男、キールの刃の餌食になる可能性が少ないアレンが叫んだ。アレンが叫ぶ直前、ルルーの眼前には大儀そうに持ち上げ光を放つ右手が、蹴り飛ばされたシエンの喉元にはロングソードの切っ先が。マリアは腰を抜かして座り込んでいる。
「久し振りに帰ったと思ったらこれか、あ? …で、アレン。何があった? …っと、おい、シエン!!」
「おぅッ!?」
「そんなとこに座り込んでていいのか?」
キールが顎で指し示した先には石壁があり、そこには。
「あ! てめえ、逃げんな!!」
いつ投げたのか、服を数箇所ナイフで固定された先刻の捕虜、そして更に動けないように首の両脇の壁にダガーが突き刺さっている。キール以外の4人は捕虜の存在を全く忘れていた。慌ててルルーが拘束魔法を発動させ、捕虜は床に崩れ落ちた。
「“誰か”がアジトに火を放ったんです。僕たちが来た時はもう全焼していました。とりあえず、捕虜を1人とマリアを救出、態勢を立て直そうと思い一度ここに戻りました」
溜息をつきながらアレンが答えた。キールが一緒にいると流石のルルーとシエンでも曇って見える。
「…どうせあいつ等だろう。まぁいい、気に病むな。とりあえず、この太刀は俺のか? 大体ハンスのものだろ? …それから、机に手紙があった。シェリィとヴァンからだ」
「手紙!」
キールから手紙を受け取ったシエンは一瞬で目を通し、ルルーに回した。それからアレンも即座に読み、マリアに回そうとしたが、止めた。マリアはまだ字が読めないのだ。
「…太刀はキールさんのです。どうしますか?」
「とりあえず、」
そう言ってキールは太刀を背中に回した。
「言うとおりにしよう」
「いや、俺は帝国王城に向かいます!」
シエラが双眸に力を込めて言った。