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Re: 終焉の歌姫が謡う時 オリキャラ募集中! ( No.52 )
日時: 2011/06/04 16:13
名前: 玖織 ◆Kqe55SnH8A (ID: Uo8bNy4h)


「いや、俺は帝国王城に向かいます!」
 シエラが双眸に力を込めて言った。

 キールの言葉を即座に却下し、単独行動します宣言したシエンは思う存分殺気を浴びせられた。
 机の上から滑り落ちたシェリィ達からの手紙には『北へ』ただそれだけ書かれていた。
「ちょ、まっ! いやいや、俺思い当たる節があるんで、ちょっと帝国にーみたいな。駄目っすか?」
「——————」
 暫くキールは考え込むような仕種を見せた。それを無視して、今度は今までずっと黙り込んでいたルルーが言った。
「駄目よ! あんた、あそこがゴミ溜めのようなとこって知ってるでしょ!? 国民も、帝王も、何もかも! キールさん!! 貴方からも何か仰ってください!!」
「いや…行け、シエン」
「キールさん!!」
 ルルーの叫び声が響く。
「お前は帝国に行って来い。ただし、死ぬなよ」
「ええ」
 そう言ってシエンは頷いた。彼はアレンとマリア、そしてルルーを一瞥してからアジトに残っていた食料や荷物、金品を集めはじめた。キールも立ち上がり、それを手伝う。
「———〜〜…!!」
「姉さんっ!!」
 何か言いたそうだったルルーは突然走り出し、アジトを出て行こうとした。アレンが呼び止める声には反応せず、『神々の聖杖』を握り締め走り去る。
「アレン」
 シエンが微苦笑して言った。
「ルルーの事、頼むよ」
「じゃなくて、お前も行けよ」
 キールの言葉がシエンの顔を歪ませた。我儘を言ってしまった彼を追い詰めるには十分すぎるタイミングと言葉だった。シエンは暫く石のように固まっていたがアレンとマリアの何かを訴えかけるかのような純粋な目かつ責めるような瞳とキールの都合よく使える殺気が放たれる瞳に挟まれたシエンは決心した様に頷いた。
「アレン、一緒に来てくれ! キールさん、マリアを頼みます!!」
「ああ。……?」
 走り出したシエンを追いかけるアレンの首元で微かにザジに貰った月を模したクリスタルのペンダントが光った事に気付いたのはキールだけだった。