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Re: 終焉の歌姫が謡う時 オリキャラ募集中! ( No.73 )
日時: 2011/06/29 19:35
名前: 玖織 ◆Kqe55SnH8A (ID: Uo8bNy4h)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2/index.cgi?mode



 …——絶対に、助けられる。


 刹那消えたアルテミスはルジェの後ろに回り込み、ナカマを翼で包み込む。
「ふふん、瞬動…いや、予備動作が無かったから…転移かー」
 余裕と言う2文字をそのまま笑顔に表現したルジェはのんびりと実況をする。
「だけど、」
「…——ッ!!!」
 すさまじい殺気はすぐ後ろから放たれている。
 何時の間にか背後へ回ったルジェは大きく手を振った。…握られている物は一振りの刃。
「こんな事じゃ俺の目からは逃れられないよ?」
 根元から切り落とされた右翼が石のように変化し、砕け散る。

 …——明らかに桁が違いすぎる。

 次は自身の首にその刃が突き立てられる。
 頭では分かっているが身体が反応しない。
 …死ぬかもしれない。
 だが…ナカマは転移させて…大丈夫だから…
 頭の回転も止まって来た。喉が渇きすぎて焼け付くようだ。
 ヒュッ、と宙を斬る音が耳に届く。

 …——右へ跳んで!

「ッ」
 何も考えずに言われたとおり右に跳躍する。
 そのまま前に転がって、今度は…上に!
 ヒュッ…ヒュン、シャッ…。コンマずれて刃が身体の脇の宙を切り裂く。

 …——右から振り向きざまに横薙ぎ、右足で60度に蹴って!

 言われたとおりに剣を薙ぐ。鉄がぶつかり合う嫌な音が響いた。
 そして。
「なッ…!」
 次の蹴りでルジェの剣が飛んだ。
 アルテミス自身も驚いたが脳内に次の指示がとぶ。

 …——次、その勢いで左回し蹴り。左腕でその右手を流して下から上に剣を払って!

「くっ…」
 ルジェの右頬に鮮血が滲む。
「やるねー…、アレン君。このアルテミスを制御して、しかも命令まで。…でも、」
 スゥ…と頬の傷が消える。
 血の跡を乱暴に拭いルジェは言い放った。
「いずれ…闇に堕ちるよ」
 眼前に迫る凶刃を一髪の差で避けきる。

 …——僕が隙を作るから…逃げて!!

 何で俺はアレンに従っている? …だが。
 一度間合いを取り、再び突っ込む。アレンの体格だとルジェの懐に潜り込んでしまえば相手はもう剣を振るえない。
「白龍!!」
 轟く咆哮の持ち主がルジェの背後に降り立つ。直後に遠くで何か大きなものが上空から落ちる音がした。
「頼んだぞ」
 アルテミスは血滴るダガーを無造作に投げすて、それだけ言い残し転移した。

「…アルテミス、俺の身体に2度も刃を入れた男…。…はははッ」
 ルジェは急に笑い出す。
「楽しいなぁ、本当に。…そう思うだろ、白龍さん?」

 白い龍は吼え、黒い翼は不気味に翻る。