ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

0章 物語は突然に 1話 ( No.1 )
日時: 2011/05/01 15:35
名前: ロード (ID: 5G1Y6ug9)

ギィィィ……

そんな不快音を周りに響かせながら、俺は扉を開ける。

「うわ……ホコリだらけ……」

そして呟いた。


【0章 物語は突然に】


俺の名前は涼野 遊馬(すずの ゆうま)。
近くの公立高校に通うごく普通の17歳。
ちなみに彼女は大・大・大募集中。

そんな俺は今、家の敷地内に存在する古い蔵にいる。
何故そんな所にいるのかって?
答えは簡単。
実は昨日親と揉めてしまい、その罰として蔵の掃除をやらされる羽目になったからだ。
だから、現在俺の両手には雑巾と箒が握られている。

「はぁ……よりによってこんな汚い所を選ばなくてもいいじゃんか」

俺はため息交じりの呟きと一緒に蔵へと足を踏み入れた。


俺の家の蔵は言い換えればただのガラクタ置き場だった。
なんでも俺の曽祖父が当時趣味で集めた物が入っているらしい。
が、曽祖父が亡くなった今では遺品として処理に困ったガラクタである。

俺は中に入り周りを見渡す。
ホコリが多いし、蜘蛛の巣も大量に張っていて視界はかなり悪いが何とか見える。
なるほど。確かに蔵の中には沢山の物が所狭しと置いてある。
一番数が多いのはおそらく書物だろう。
棚に収まりきらずに色んな所に散らかっている。
俺は適当に近くに置いてあった本を手に取り開いてみる。

「何だコレ?」

そこには見た事の無い字が躍っている。
教科書などで見る昔の字なんかではない。
感覚的には英語とかに近い。
だが、英語でもない。

俺はしばらく興味深くそれを眺めていたが、すぐに飽きた。
本を元にあった場所に戻し、俺は蔵の奥へと進んだ。
矢先、何かに躓いて俺はこけてしまった。
その時に発生した風がホコリを舞い上げる。

「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ……何なんだよ一体」

俺は文句を言いながら、足元に転がっている物を引き寄せる。
それは袋に入った長細い物。
大きさの割にかなり重い。
俺は首をかしげながらも、袋の口を解き中の物を取り出す。


「え?これは……」

俺は驚きで固まってしまった。
袋から出てきたのは日本刀。
柄は赤く、鞘は黒い。
鼓動が強くなるのを感じながらも、落ち着いて柄を握り鞘から刀を抜いてみた。

「……すごい……」

素直な感想だった。
刀は音も無く抜け、光のあまり無い蔵の中でも鈍く輝いている。
触らなくても分かる。
間違いなく本物だ。

だが、何で本物の刀がこんな所に?
曽祖父のガラクタの一つだろうか?

そんな疑問が出てきたが今となっては確認のしようがない疑問だった。
俺は首を振ってそんな疑問を頭から追い出し、気を付けながら今度こそ蔵の奥へと進んだ。


蔵の奥に行くほど光は届かなくなり、一番奥ともなるとほとんど真っ暗。
それでも目が慣れてきたので少しだけ見える。
そんな蔵の一番奥に仕舞われていたのは、大きな何かである。
輪郭しか分からないが、高さ2mで幅1mくらいの大きさである。
好奇心しか残っていない俺はその何かに触れてみた。
そして気付く。
これは上から布が被せてある事に。
俺は躊躇なく布をはがした。

その布の下から出てきた物は大きな 鏡 だった。
縁は綺麗に細工がされていて見ただけで高級感が漂う。

俺は目を細めて縁の細工に顔を近づける。
そこには文字のような記号のようなモノが彫ってある。
すぐに俺は思い出した。
さっき見た本に記してあった字と同じ字だ。
俺が興奮しながら鏡を眺めていると、事が起きた。

—— 鏡 が突然光りだす ——

光を反射しているのではなく、鏡自ら光り始めたのだ。
俺が好奇心半分恐怖心半分で眺めていると体が自然と動く。
何も握っていない左手が鏡の表面に近づき……触れる。

瞬間、吸い込まれるような感覚とともに俺は意識を失った。



数秒後鏡は光を失い、普通の鏡になった。
その近くに遊馬の姿はない。