ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: †十字架に導かれし者† ( No.3 )
- 日時: 2011/07/29 11:22
- 名前: 翡翠 (ID: zuIQnuvt)
あれから、歩き続けて数十分、梓は違和感を感じて後ろを歩いているであろう椿の方へ振り返り、後どれくらいで学校に到着するのか聞いてみる事にした。
「椿、後何分くらいでつく?」
振り返って、そう、言った。
だけど、すぐ後ろを歩いていたはずの椿の姿は見当たらず、返事も返ってくることは無かった。
「あれ? 椿? ちょっと、何隠れてるのよ? 隠れてないで早く行こう?」
誰もいないその場所で、私は焦りを感じながらも、椿が返事をしてくれる事を祈りながら何度も名前を呼んだ。
だけど、返事はやっぱりなく、時間だけが過ぎてゆき……
何時しか私は混乱状態に陥りかけ、今にも泣き出しそうになっていた。
そんなときだ、
ガサガサガサッ……
風も吹いていないのに、近くの茂みが揺れて、音がした。
私はその音を立てたのが椿かもしれない、そう考えて、茂みの奥に歩き出した。
そして、しばらくその茂みの中を進んでいくと、そこには、いかにも怪しい古びた館があった。不気味なオーラに包まれたその館は、一歩足を踏み入れるだけでも勇気が必要な、そんな場所に思えた。
こんな場所、普段の私なら絶対に近づかず、見なかった事にすると思う、だけど、今は何故だろう、凄く、この古びた館に引きつけられてるような気がして……。
無意識のうちに館の中へと足を進めていたんだ。
館内に入ると同時に埃や湿った土のような臭いに包まれる。
とてもジメジメとした空気は髪や身体に纏わりついてきて気分が悪くなりそうだった。それに、館の中は外の光が届かないのか暗く、昼間だとは到底思えなかった。
「暗くて何も見えないし……凄く不気味」
そう、音も無い暗い館内をゆっくりと歩きながら、呟いた。
それから、随分と広い館内を歩きまわって、暗闇にも目が慣れていた頃、凄く頑丈そうで館内でも一際立派だと思われる古い扉を見つけた。
扉に鍵がかかっていないのを確認すると扉に手をかけ、ゆっくりと押し扉の向こうへと足を踏み入れた。
室内は思ったよりも狭く感じられたが古い家具や飾られている絵などは細かい模様などが刻まれていてそれ等に自然と視線が向けられた。
しばらく室内の絵やそういったものに目を奪われていた後、暗い部屋にも関わらず一箇所だけ光り輝いている場所を見つけた。
暗い部屋の中では不気味に思えるほどに輝くその場所に私は少しずつ近づく。……近づいた先にあったのは“白く輝く宝石箱”の様な小柄な箱だった。その箱を手に取り呟いた。
「何だろう? この綺麗で不思議な感じの箱……」
手に持ってみると少し重さがあり中に何か入っているのが感じられた。
何が入っているのか気になってしまった私は思い切って箱を開け、中身を確認してみる事にした。
カタッ……
小さな音とともに箱が開く。
箱の中を見てみると、そこには銀色に輝く“十字架”が納められていた。
「わぁ、綺麗……」
あまりに綺麗な十字架に思わず見惚れてしまう。
しばらく様々な角度から十字架を見ていて、ある事に気がついた。
十字架の裏側に小さい鏡がついいている事に。
「何これ? 鏡?」
何気ない気持ちで、その鏡を覗き込んだとき、真っ白な光が溢れ出し、その中に人? の様なものが見えた気がした。
「今の、は……?」
一瞬だけ見えた人の様なものが気になった私はもう一度鏡を覗き込む事にする。すると、さっき一瞬しか見る事の出来なかったものが眩い光と共にはっきりと見えてきたんだ。