ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白い薔薇は悪魔色 ( No.11 )
- 日時: 2011/05/05 11:13
- 名前: 華世 (ID: 9QYDPo7T)
■♯1
此処は何処? 何で走っているの? 私は何から逃げているの?
いろいろな疑問が頭の中を駆け巡る。
何処だかも分からない場所を何故か走っている。
真っ暗闇の中を、たった一人でずっと。
その時だった。
『……テ……待テ……!』
小さいけれど、どこか強い女の声が聞こえて来る。
その声に振り向くと、青紫の光に包まれた女が近づいて来るのが見えた。
「誰……?」
声がした方をもう一度見たが、女は消えていた。
「気のせいかしら?」
暗闇なので視界も悪い。見間違えるのも無理はなかった。
目をこすりながら、また前を向く。
その瞬間、体が凍りついた。
あの奇妙な女が、自分の目の前に不気味な微笑を浮かべて立っていたから。
その手には巨大なカマが握られていた。
そして、奇妙な女は巨大なカマを自分の頭上に振り上げた。
「キャアァァァ!!!」
自分の叫び声も、自分の存在も闇の中へと消えていった。
「いやぁぁぁぁ!!」
勢い良く飛び起きると、其処は現実。
先ほど起きていた事は夢だったのだ。
「夢かぁ……」
そう呟く清歌の額は、汗でびっしょりと濡れていた。
そんな清歌とは裏腹に、外は雲ひとつも無い穏やかな朝を迎えていた。
清歌は急いで制服に着替え、食パンを一枚銜えて家を出た。
家の前では、小学校のときからの親友、東大寺紅華が退屈そうに待っていた。
「紅華、おはよう! 遅れてゴメンね」
申し訳なさそうに謝る清歌を見て、紅華は微笑む。
「おはよう。あたしは大丈夫だ」
「本当にゴメンね。じゃあ、行こうか!」
紅華はコクリと頷き、歩き始めた。
そして、家の通りを抜けたとき、紅華が清歌の顔を覗き込んだ。
「ちょっといいか? どうしてそんなに汗を掻いているんだ……?」
その問いに、清歌はぎくりとしたが、
「えーと、ちょっと急いでて!」
そう言って、紅華に作り笑いを浮かべて見せた。
夢は隠しておくと、現実になるという事も知らずに。