ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 白い薔薇は悪魔色 ( No.16 )
日時: 2011/05/05 19:49
名前: 玖龍 ◆7iyjK8Ih4Y (ID: ZTrajYO1)

■♯4



「ふぅ」


二人分のレポート用紙を持ち上げて、私は小さく頷いた。
いい出来。コレなら先生も許してくださるでしょう。

私は手に持ったシンプルなシャープペンをシンプルな筆箱の中にしまって、席を立った。
机に置いた紅華への手紙を届けに行かなくては。


「お嬢様、どちらへ?」


上着を着ている私に話しかけたのは、召使さんだった。
私はふわりと微笑んで言う。


「友達に頼まれた届け物をしに行きます。お父様に伝えて下さいます?」


「はい、伝えておきます。車を出しましょうか?」


「いえ、すぐそこなので。有難う御座います。行ってきます」


「行ってらっしゃいませ。お気をつけて」


召使さんの笑顔に答えると、重い扉を押して外に出た。
夜の街は静かで、涼しげな風が吹いていた。




約15分間歩いてついた紅華の家の明かりはついていなかった。
午後九時すぎ。


「あら、もう寝てしまったのかしら」


せめてポストにでも入れておこうと、家に向かったそのとき。


『ゴトッ』


物音。
私は気になって、ポストに手紙を入れて、窓に近づいた。

悪い予感はしていたんだ。
私は、見てはいけないものを見てしまった。


「キャアアアァァァァ!!」


私の悲鳴じゃない。
紅華……!!

私は紅華の上にいた人を見た。
見えてしまった。


私は悲鳴を出さずに走った。
見つかったらきっと殺されてしまう。

走って、走って。



「ハァハァ……」


「お嬢様!?どうなさいました!!」


飛び込んだ自分の家の召使さんが駆け寄ってくる。

私は、喉まででかかった言葉を飲み込んだ。
言っちゃ駄目だ。そしたら……。


「お、表に蛇がいたから……。すみません、心配かけて」


「まあ……」


言っちゃ駄目だ。
絶対駄目……。