ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白い薔薇は悪魔色 ( No.21 )
- 日時: 2011/05/07 11:49
- 名前: 華世 (ID: 9QYDPo7T)
- 参照: http://blog.goo.ne.jp/kayorara0623/c/10d4f829ed7443238ebae485be1c54e4
■♯6
「絶対に私じゃない……!!」
叫びながら、飛び起きた。
辺りを見回すと自分の部屋。
どうやらまた、夢だったようだ。
「また夢……」
そう呟き、私は窓を開けた。
涼しげな夜風が頬をなでる。
その夜風に当たって、静かに目を閉じる。
時計の針は午後の8時を指していた。
しばらくしてから、私はある事を思い出した。
紅華に借りていた英語のノートを返していない事に気がついたのだ。
明日は英語の授業があるので、ノートを返さなければいけない。
こんな遅い時間に届けに行くのは、と気が引けたが、行くことに決めた。
英語のノートを片手に、私は歩く。
早歩きでひたすら歩く。
その時だった。ふと、目眩がしたのだ。
そして、私には聞こえた。あの女の声が。
『悪夢は現実になる』
そうはっきり聞こえたのだった。
気味が悪くなり、悪寒が走った。
私は耳を塞ぎ、その場を立ち去った。
走っても走っても、同じ道をグルグル廻っている気がして。
頭の中にあの奇妙な女の声が響いてくる気がして。
張り裂けそうな感情を必死に抑えながら、紅華の家へ向かった。
ピンポーン……
インターホンが鳴り響く。
すぐに扉は開いた。紅華が出てきた。
「遅い時間にゴメンね。英語のノートを届けに来たの」
「そうか、ありがとう。少しだけ上がっていって」
お言葉に甘えて、少しの時間だけお邪魔することにした。
「英語の宿題どうだった?」
紅華がハーブティーを差し出しながら言う。
「紅華のおかげで助かったよ!」
私は微笑みながら言った。紅華もよかった、と微笑む。
その時、悲劇はまた起きた。
激しい目眩が私を襲う。耐え切れなくなり、床へ寝転ぶ。
「清歌! 大丈夫か!?」
私に向かって叫ぶ紅華の顔が、みるみるとあの女の顔に変わっていく。
「キャア!!」
気づいたら突き飛ばしていた。紅華は床へ倒れこむ。
「清歌……!」
紅華が立ち上がった。いや、もう紅華ではない。あの女だ。
手を差し出す紅華の姿が、巨大なカマを持ったあの女にしか見えなかった。
自分を守らなきゃ。
幻覚とも気づかない私は、傍にあった竹刀を振り上げた。
さようなら、紅華—————。