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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白い薔薇は悪魔色 ( No.33 )
- 日時: 2011/05/08 13:25
- 名前: 玖龍 ◆7iyjK8Ih4Y (ID: ZTrajYO1)
■♯10
やってしまった。
ついに人を殺してしまった。
真っ赤に染まった手の平は、うっすらと後悔の色が見え始めている。
あんなお願いに、承諾するんじゃないかった。
僕のバカ。いくら桜川のお願いといっても……。
紅い色が、涙でかすんだ。
足元には、ナイフで刺した水季の死体。
まだ生暖かい水季が怖くて、今にも動き出しそうで、僕が殺されそうで。
怖くて、何度も何度もさした。
血でぐちゃぐちゃ。
そのまま逃げ出した。
血のついたTシャツを上着で隠して、走った。
水季の言葉が耳について離れない。
「清歌、本当に人殺しよ」……なんて。
信じない。僕は信じない。
僕みたいな汚れた正義じゃない、透明な桜川が……。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
「奏也君……!!」
家の前で待っていた桜川が、なみだ目で笑う。
僕はもう表情なんて問題じゃない。
涙が、止まらない。
血の感覚が消えない。
桜川はそのまま僕を抱きしめた。
「有難う……」
僕は棒立ちのまま。
桜川が見えない。
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