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ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 白い薔薇は悪魔色 ( No.45 )
- 日時: 2011/05/08 19:46
- 名前: 華世 (ID: 9QYDPo7T)
- 参照: http://blog.goo.ne.jp/kayorara0623/c/10d4f829ed7443238ebae485be1c54e4
■♯11
急に目眩がした。立っていられないくらいの激しい目眩。
僕は絶えられず、床に倒れこんだ。
「奏也君!?」
桜川の声が聞こえる。
心配そうに見つめる桜川に偽りの笑みを浮かべて微笑む。
「大丈夫だ。ちょっと目眩がしただけだから」
そう言って立ち上がる。
でも、何か変な感覚だ。頭がボーっとする。
それに、それに何だか……殺意が沸いてくる……
桜川を殺したい—————。
「大丈夫?」
少々戸惑う桜川が見える。その姿がたまらなかった。
ますます僕の殺意が沸いてくるよ。
水季を刺した血の付いたナイフをゆっくり引き抜く。
抜くと同時に、紅い鮮血が溢れ出てくる。
滴る鮮血は桜川に途轍もない恐怖を与えているようだ。
「嫌……来ないで!」
首を振りながら、後ずさり。
如何して僕から逃げようとするんだい?
もっと君を殺したくなったよ。
「君は如何して逃げるんだい? 僕が嫌いなのか?」
僕の問いに、彼女は答える。
「あ、愛しているわ。でも、今の奏也君は嫌……」
そう言いながら、一粒の涙を零した。
僕は呆然とした。
彼女に、桜川に拒絶された。心に突き刺さる拒絶。
「そうか、君は偽者だね……」
グサ……
その瞬間、我に返った。
僕は桜川を、一番愛している人をこの手で殺してしまった。
「うああぁぁぁぁ!!!」
泣き叫んだ。もう戻ってこないのに。
体が軽くなった。それと同時に、僕の心にもぽっかりと穴が開いた。
悪魔がすべて奪い去った。
その時、僕の心の中で純粋な白薔薇が儚く散っていった。
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