ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 世界の怪談(短編集) ( No.14 )
- 日時: 2011/06/20 16:18
- 名前: 涼 ◆703fA5c/sc (ID: Amc8WCDv)
#09 ( ハーメルンの災厄 )
ハーメルンの笛吹き男。それはドイツの民間伝承で世界的に有名な話。
実は実際にドイツで起こった事件だという。それを物語として創作し、
後の世代に伝えたのが、ハーメルンの笛吹き男。
では、何故そのハーメルンの子供たちが消えてしまったのだろうか。
笛吹き男は現れたのか、それとも創作のなかでしか存在しないのか。
それを知る者は、誰もいない。
真実は永遠に謎のまま。
——
街にペスト病が流行した。弱い子供たちは次々と病にかかり臥せる。
そこに現れたのは、桜の木で出来た横笛を持った美青年——司だ。
閻魔大王の命令により、ヨーロッパの神々が死神の手が足りず、
大忙しだから、ヨーロッパの死神を手伝えということで来たのだ。
ドクロの顔に黒いマント、大鎌を持つ。いかにも死神だ。
典型的なヨーロッパの死神の容姿を持つ名前はヨーゼフという死神は、
なかなか愛嬌があり、司に大ふざけの冗談を良く彼に零す。
司は半分聞き流し、舞台となるハーメルンに着いた。
「えーと、横笛を吹いて子供たちの魂を集めてくれよ!」
「分かった」
「んじゃあ、俺は人間に化けて街を観光だああっ!」
白い煙とともに消えた。単純な奴、と司はぼやいたあと、
さっそく始めることにした。
まずは街の中央に立ち、日本の伝統楽器、横笛を吹く。
東洋の謎に満ちた音色にペストで死んだ子供たちが次々と現れる。
行列になったのを見届けると、司は歩き出す。
ぞろぞろ、ぞろぞろ。音が出るくらい、子供たちは集まり行列になり、
司を先頭に歩き出した。途中である子が泣きだす。
母親に逢いたい、と。
つられて次第に全員が泣きだした。列を抜けようとする子もいた、が。
一度列に並んだら、おしまい。もう二度と抜け出すことはできない。
街の人たちは悲鳴をあげ、泣き叫んだり、狂ったりする者もいた。
それでも音色は止まらず、列は続く。続く………
街の大人たちが目撃するくらい、この街はペストに犯されており、
生死を常に隣り合わせだったせいで誰もが死者が見える、怪奇な街。
いつまでも現世に留まり続ける子供たちを素早く天国ではなく、
地獄に送るのが役目。
そう、役目なのだ。西洋の子供は死んだらすぐ地獄に送られる。
東洋の子供は地獄に送られるも、大人の味わう地獄は罪を犯した子だけ
だけど西洋は違う。大人と同じ苦しまなければならないのだ。
救われる日は、来るのか。
生憎西洋の宗教は詳しくないので分からないが、救われるのだろうか。
それも知らない。子供たちは地獄に送られることも知らない。
何も知らない。
何も分からない。
————ハーメルンの笛吹き男。
「地獄はもうすぐ、そこ」
丘に消えた子供たちをあの世とこの世の人物を見分けつかなくなった、
大人たちが死に物狂いで追いかける、だけど道は二度と見つからない。
大人たちは後に伝承として伝えた。
多くの学者たちが研究し、子供たちが失踪した理由を研究する。
それでも、分からない。
何故なら。
あの時の街の大人たちが、狂ってたのだから。
Fin