ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 世界の怪談(短編集) ( No.5 )
- 日時: 2011/05/20 19:51
- 名前: 涼 (ID: Q7YZ/LhH)
#04 ( 吹雪の晩 )
ある所に姉弟が二人だけの小さな家に住んでいた。
両親は流行り病で幼い頃に次々と死んでしまった。
それで二人で一生懸命お互いを支え合って生きてきたの。
姉のエレーナは年頃の娘なのに誰の所にも嫁入りせず、
気侭に暮らしていた。
エレーナは18歳、弟のミーシャは16歳だ。
姉のエレーナの異性に対する無関心さにミーシャは度々こう言った。
「姉さん、もう僕は一人で自分の世話は出来る、だから姉さんは嫁入りしなよ」
「良いのよ、アタシはミーシャと気侭に暮らしていたいわ」
と話題にしてもはぐらかすのだった。
そんなある晩、吹雪がいつにもなく強さを増した頃だった。
「寒いわね、明日は大雪ならなきゃいいけど」
「薪が足りなくなるかも知れない、明日晴れたら、薪拾いに行くね」
ミーシャはそういうと、暖炉に新たな薪を入れた。火の勢いが増す。
エレーナはソファーで編み物を、ミーシャは狩りの銃を手入れをしていた時。
—— コン、コン
最初は吹雪の音で聞こえなかったが、次第にコンコンと音が増した。
こんな酷い吹雪でしかも夜に何事だ、とミーシャがドアを開けた。
目の前に美しい女性が立っていた。
あんまりの美しさに見惚れるミーシャを他所にエレーナは尋ねた。
「こんな夜遅く何をしているのですか?」
「突然の吹雪で道に迷いましたの、どうか一晩泊めてください」
ふと、ミーシャは女性に違和感を覚えた。
良く見ると女性の服装が薄着だったのだ。
今は長く厳しい冬なのに。
ただでさえ吹雪のない冬も寒いのに吹雪はもっと寒いはずなのだ。
そのことに気付いたエレーナとミーシャはただ震える思いだが、
寒そうにしている女性を見るうち、哀れんで中に入れてやった。
女性に暖かいホットミルクを渡し、使われてない部屋へ案内した。
女性が眠りについた後、エレーナたちも眠りについた。
真夜中にふとエレーナは目を覚ました。
何処からか物音がするのだ。
「…………………?」
何事だろう、エレーナはそっと部屋を出た。
リビングの方から物音がする。
エレーナは足音立てず、リビングのドアの隙間が開いてたので覗けば。
人影が何かをしていた。
エレーナは。
(あの女性だッ!!)
すぐに思いつき、気付かれないよう急いで弟の寝てる部屋に向かった。
エレーナに説明されたミーシャはライフル銃を持ってリビングに行く。
二人が来たことに気付いた人影は逃げようとする、がミーシャにより、
ライフル銃で撃たれてしまった。
同時にぎゃあああああああっ、という猫の鳴き声がした。
灯りをつけ、急いで女性のいる部屋に入った二人が見た光景は。
ベットにいるはずの女性の姿はなくなっていた。
◇
翌朝二人は昨日のことについて話し合っていたさいに誰かが訪ねてきた
隣に住む老夫婦のお婆さんだった。お婆さんはこんな世間話をした。
「昨日ね、隣町で相次いで殺人事件が起こったんだよ、しかも、噂だけど被害者は全員猫に引っかかれたような傷跡があり、現場で白猫が目撃されてるらしいわ、あなたたちも気をつけなさいね」
その話を聞いた直後、エレーナは茶を沸かそうとキッチンに行ったとき
異常な悲鳴をあげたのだ。
驚いたミーシャとお婆さんが見た光景は。
白猫が血まみれで倒れている姿だった、そして爪は紅く染まっていた。
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