ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re: 世界の怪談(短編集) ( No.7 )
日時: 2011/05/22 14:53
名前: 涼 (ID: Q7YZ/LhH)

  #06 ( 学校 )



ある日の夕方。部活が家庭部だった私は片付けていた。

今日は大好きな苺タルトが作られたから、

片づけが面倒に感じなかった。

多く貰った苺タルトを薄茶色の紙袋に3個入れた。

そして鞄に仕舞う。残念だけど家族に分けず一人で食べるため。



「春海、上手くできたじゃんか」

「そう、郁美いくみ?」



友人の郁美と喋りながら片付け終えた。

先輩たちはすでに先に帰って調理室は私たちだけだった。

調理室に鍵を掛け、職員室に戻したあと、私たちは廊下を歩く。

1階に降りたさい、郁美が突然こう言い始めた。



「ねぇねぇ、調理室の噂、知ってる?」

「何それ?」


郁美の顔がニヤリ、と笑ったように見えたのは、気のせいだよね。

次のようにこんな話をし始めた。



「昔々にある女の子に親友だと思ってたのにだよ、彼氏を奪われた子がいたんだ、その子は悔しくて親友と同じ部活の調理室で自殺したんだってさ、それから夜な夜な泣きながら出るだってさ。まあ、それはもう数十年前の話なんだけどねー」

「えー、そんなの知らなかったなあ」



そんな噂があるだなんて調理室が入りづらくなるじゃん。

はあ、と溜息した私に郁美は話を続ける。



「それでね、その親友はその後、その彼氏と結ばれ子供に恵まれ孫もできたんだってさ」



郁美の声が低くなり、私はある違和感を始めて覚えた。



( こんなに、廊下……長かったかな? )



先程から随分と歩いているつもりなのに、まだ玄関に着かないのだ。

私は郁美に知らせようと、郁美のほうに振り向いたら、

郁美はセーラー服という昔の制服を着てて三つ編みだった。

驚く私を他所に、目から血を流して、郁美は話を続ける。





「その親友の名前が杉本晴子、自殺した女の子の名前は飯田郁美、というんだよ」




郁美の言葉に私は気付いた、郁美は調理室で自殺した女の子だと。

そして親友の名前が私のお祖母ちゃんの名前だと。

身体が震える私を郁美は冷めた目で見て。




「気付いた? あたしはあんた等を絶対に許さないッ!! 道ずれにしてやるっ!!」

「きっ……きゃああああああああああああああっ!!」







——






学校の廊下で見つかった変死体で見つかった杉本春海。

その子の葬儀が執り行われ、やがて終わった。

遺族たちはこう言いあった。




「やはり、またか……」

「お祖母ちゃんが昔の過ちで私たちが巻き込まれるだなんて良い迷惑よ」

「もう、この家に生まれたが最後だな」



と諦めついた声で言いあったという……

あなたも昔になにか、

過ちを犯しませんでした?









Fin