ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: Trick Animation . . . ( No.3 )
- 日時: 2011/05/19 17:05
- 名前: あぺか ◆xi9CqIOvBg (ID: H6B.1Ttr)
【第1章】 第1話 異世界への扉
「・・・腹減ったな」
8時45分。別に腹が減ってもおかしくはない。
食パンを2枚ほど焼いている間に、冷蔵庫をあさる。
とりあえずハムと卵でテキトーに作ってみたけど、
なかなかの出来だ。自画自賛。
一枚のトーストを片手に、チャンネルを変える。
大抵この時間はポップなニュースかアニメぐらいしか
やっていない。
「先にバイトの準備しちゃおうかな・・・」
とかなんとか考えている間にも、秒針は急かすように
一秒、一秒と過ぎてゆく。
まるで過去を消すかのように。
いや、消したいのは私かもしれない。
そんなことをノロノロと考えながら食べていたら、
あっという間に9時を過ぎていた。
「冬真ー。そこのメモ帳とってー」
「えー?どこー?」
リビングと向かいの部屋から母の声が聞こえる。
どうやら電話中のようだ。
「そこ。電話台の〜あーそうそう!そこそこ」
「え?コレ?」
渡しにいくと、
「あ、ペンも」
「先に言ってよ」
今こそ普通の家庭風景だが、昔は色々とあった。
それを乗り越えるまで、時間は待ってはくれなかった。
その記憶のせいで、私も大分苦労した。
だから、消したいのだ。
とりあえず、ケータイを取りに二階へ上がる。
自分の部屋の前で止まり、いつも通りドアを開けた。
が、"いつも通り"ではなかった。
「・・・は?」
緑が生い茂る、輝かしい季節、春。芝生がキレイに生えていて、
ちょこん、と小さな花々が咲いている。
簡単に言うなら天国へ逝ったかのような世界観が、そこには
広がっていた。
確かに目の前の事は事実。後ろを向けば普通に階段だし、
横を見れば開かれた扉がある。母の部屋だ。
ベタにホッペをつねる。
・・・痛い。
「冬真、なんで突っ立ってんのよ。邪魔」
母に押された。きっとこの世界のことが
見えていないのだろう。
一歩踏み出した瞬間、違和感を覚えた。
「・・・あれ」
ドアがない。
後ろにあったはずの、ドアがない。
目線を落とせば草原。さっきの芝生だ。
このままどこまでも突き進めそうなくらい、向こうは遠い。
「あれ・・・な・・・え!?」
混乱するしかない。マトモな日本語も喋れない。
私は、何をしているんだろう