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Re: 【●】 機 甲 妖 精 隊 【●】 ( No.7 )
日時: 2011/05/28 16:49
名前: モノクロ ◆xl4B3i0CLs (ID: rbVfLfD9)
参照: フェアリー!( ゜∀゜)o彡゜フェアリー!( ゜∀゜)o彡゜

塔の採掘が始まってから20年の月日が経った。
塔の周囲には既に本格的な研究所が設けられ、掘り返された技術の実験が行われていた。
その中のとある一室に“彼女”は居た。
清潔な白い部屋のベッドに腰を掛け、定規で測ったかのように整った姿勢で座っている。
その顔はまさに人形である。
顔の全てのパーツが整っているが、表情は無い。

「……」

彼女は無言で血液の採取に応じていた。
相手は向かいの椅子に座る白衣を着た長髪の女性。
ここの研究員だ。

「──はい、ありがとうね」

「どういたしまして、“マスター”」

研究員は彼女から採取した血液サンプルを、机の上のケースに収納した。
そして女性は少女へと体を向けた。

「貴方はインターネットに接続してこの世界の言葉を学んだの?」

「はい」

少女は無機質な声で返事を返した。

「凄いわね! ネットに自分自身の電脳を接続できるなんて……羨ましいわ」

「……ありがとうございます」

褒めたのだが、少女は表情に出して喜んではくれない。
研究員のほうから話しかけないと、会話が途切れてしまう。
女性は、またひとつ彼女に質問する。

「ええっと……じゃあ貴方は何処から来たの?」

「すみません、分かりません……ですが、私の体は戦闘を行うのに適した改造が施されています。塔のカプセルの中で長い時間眠っていた事も考慮すると、私は何かと戦うために作られ、そのまま放置されてしまった“物”なのかもしれません」

その言葉を聞いた研究員の女性は、悲しそうな表情を作り、少女の手に自分の手を重ねた。
少女は何億年もたった一人で眠り続け、現代人によって掘り返されて“研究対象”となっている。
さらも表情を変えることなく、自分は兵器かもしれないという少女に思わず同情したのだ。

「貴方は“物”ではないわ、貴方は“生きている”。私と同じく食事をするし、考えて行動するでしょ。自分で自分の事を“物”なんて言わないで」

研究員の女性は少女に顔を近づけて、彼女の目を見ながら話す。

「……」

しかし少女は不思議そうに研究員の女性を見つめるだけだった。



【●】登場人物【●】
 
【●】武美 美里(たけみ みさと)
   ※「研究員の女性」
【絵】モノクロ(>>10)
【・】とても優しい研究員の女性。塔より採掘した技術を解明するのがお仕事。現場の責任者。塔で発見したシロを保護している。