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Re: アビリティワールド 「壱」始まりと終わりは紙一重 ( No.4 )
日時: 2012/02/10 17:31
名前: 遊太 (ID: HhjtY6GF)

  〜(3)〜



 「・・・わしじゃよ。どうしてだ?」



山本は微笑みながら優太たちに近づいてくる。
優太の様子を見て、武道、京一、恵太も山本の異変に気づいた。
山本の顔がブニョブニョとまるでスライムのように歪み始め、やがて彼の皮膚全体が奇妙に歪んでいく。
「な、なんだよこいつ!?」
武道は戦闘態勢に入り、優太と恵太も目を合わせて構える。唯一、戦闘に不向きな京一は3人の後ろに下がった。

   「さァァァてとォぉおぉ、へーんしーん!!!!」

山本らしき人物は両手を拳に変えて空高く掲げ上げ、大きな声で幼稚園児でも叫ばないような言葉を叫んだ。
一瞬、辺りは静寂に包まれるが、山本らしき人物がこちらを向いた瞬間に、全員は声を上げて驚いた。
山本の姿から、道化師の様な格好をした若い男性の姿に変わっていた。
ジーンズに白いシャツ、顔は白化粧で右目と左目はそれぞれ赤いハートとダイヤで飾っている。
「驚いているね、まぁ、そうか。キャハハハ!!!!」
男性はポケットに両手を突っ込み、屋上を囲むフェンスに寄りかかる。
4人は男性の正体が分からず、ただただ呆然としていた。
男性は4人を見てニッコリと笑うと、口笛を吹いた。





         ドゴォォォおォおォオォォおおォン!!!!!!!





屋上の一部が突如爆発し、炎と黒煙の中から2つの人影が飛び出てきた。そして、男性の前に着地する。

「やぁ、任務ご苦労。カタピーノ、ビーナス。」

黒い装束に身を包んだカタピーノという男性と白いワンピースをきた銀髪のビーナスという女性が、4人を見て嘲笑う。
「団長。こやつらは始末した方が良いのでは?」
「私がやります。」

   

      「よせ、目的は彼だよ。本城礼一郎、そこに隠れているんだろ?」



男性が言うと、カタピーノとビーナスが出てきた穴から、本城が紅蓮の炎に身を包んでやってきた。
「何十年ぶりだろう・・・またこうして顔を合わせることができるなんて。」
男性は鼻で笑い、三文芝居のセリフを言う。
そんなふざけている男性とは打って変わって、本城は真剣な顔つきで男性を睨む。
この間、優太たちはどうすればいいのかも分からず、状況や男性と本城の関係すら理解不能であった。
「俺の生徒に手を出すな。今更、何のようだ?」
「んふふ・・・・・・ちょっと聞きたいことがあって、ジャパンまでやってきたのですが・・・あなたが、先生ねぇ・・・」
男性は顎を触りながら、その奇妙な顔で舐め回すような視線で本城を見る。
本城は舌打ちをし、両手から紅蓮の炎を出した。




                        「ベニーワイス、お前はここで死ぬべきだ。」


  「あらら、戦いたいのは山々ですが、私たちはこれでお暇させていただきます。」





ベニーワイスと呼ばれた男性は本城にお辞儀をすると、一瞬だが優太を見て微笑し、ビーナスの肩を掴む。
「また逢いましょう。若き戦士たち、そして、同士よ。」
ベニーワイスはそう言うと、カタピーノとビーナスと共に一瞬にしてその場から消えた。





    ********










 「この件は、とりあえず世界政府の日本支部へ通達しておきます。
    それと、行方が分からない山本さんについては警察に通報して捜査をしてもらいます。
   みなさんは今後、何か不審な点に気づいたらすぐに警察か日本支部に通報してください。では、今日は一旦ここで。」









未だに納得できていないボランティアに参加している人たちを、本城は必死に説得している。
そんな中、ボランティア部のメンバーは目の前にある放送センターの階段に座って休みを取っていた。
「・・・なんだったんだろうな、あのピエロ野郎。」
武道が浮かない表情で言う。現場にいなかった里奈と理々花は、余計に男子4人を心配していた。
「怪我はないの?本当に大丈夫?」
「大丈夫。里奈と鈴木は大丈夫だった?」
「私は大丈夫です。先生に助けてもらいましたから。」
理々花は振り向き、まだボランティアの人々に説明をしている本城の方を見て言う。なぜか、目が輝いている。
「みんな無事なら、まぁ良いか。」
優太はため息を吐くと、空を見上げた。


 「しっかし、なんか納得いかねぇ・・・・・・・・・」


武道が呟いた。
「先生とピエロ野郎、知り合いだったのか?」
「ま・・・ぁ、そんな感じの会話でしたけど?どうしてですか?」
「んにゃ・・・やっぱりなんでもねぇや。さっさと家に帰ってシャワー浴びたいわ。」















    同時刻・・・・・・──── 









  「今がチャンスだ。作真、奴は学園の外。今学園内に猛者はいない。」




腰に日本刀を持ち、桃髪の青年が双眼鏡を覗き込みながら言う。
「しかし、今実行しなくてもいいんじゃないのか?」
「あぁ?いつ実行しても同じだよ!!あぁ・・・早く戦いてぇ!!!」
「六田、花園、準備しろ。もうすぐ行くぞ。」

 六田桜太と花園狼一郎の後ろから、大きなヘッドホンにジャージ姿の志村彪冴が現れる。

桜太は双眼鏡を直し、若干ダルそうな雰囲気を出して志村の前を横切った。
それに比べ、狼一郎はハイテンションで桜太を追い抜く。




   「さぁ、ショーの時間だ。」