ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

Re:   私は私を壊した / 覚醒剤中毒者 ( No.54 )
日時: 2011/07/15 19:37
名前: ERio...xx ◆2fprVGDylE (ID: 3mpQ0ToE)

→013♯


そう、私は殺していない。ちゃんとした理由があったから。これは、正当な行為。
捕まらない。そう、私は「処刑」をした。ね?そうでしょ?


「──絶対捕まらないわ」


そういえば…玲、玲がいた。私の彼氏。大好きな彼氏。「橘 玲」。
玲に…会いたい。会いたい。今すぐに会いたいの。
でも…今の私には無理。ちょっとの間、距離を置く。

嗚呼、また薬が欲しくなってきた。喉が渇いた。欲しい。そうだ、買いに行こう。




「……いるの?」


主語を使わずに言った。多分、分かる人には分かるんだと思う。
少ししてから、返事が来た。


「いるわ、今日は私。貴方に会うのは初めてかな?」


黒い影から出てきたのは、女性だった。
その姿はとても美しく、それなのに少し幼く、同じ年代の女性のようだった。同じ薬を使っている人間には思えなかった。


「あ……はい。あの、えっと、いつもの人は……」

「今日はね、お休み、代わりに私が来ているの」

「そうなんですか……」


腕に視線をやると、ペットボトルを握っている。
きっと覚醒剤を使っているんだ、そう思った。


「じゃあ、あの、お金……」


私は女の人の手に一万円札を渡そうとした。その時だった。


「動くな!覚醒剤取締法違反で逮捕する」

「!?」

「動くんじゃない!」


後ろを見ると、警官らしき人間が数人いた。
私と女性は動けずに震えていた。


「腕を出しなさい。今から刑務所に来てもらうよ」


女性は脱力しながら腕を前に出した。手錠を腕にかけようとする。
その時だった──


私は一瞬のうちに女性の腕を引っ張って逃げた。
走って、走って、がむしゃらに走った。



そして、


──私達は、警官を振り切った。