ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 遺伝子コード000±0×0 ( No.5 )
- 日時: 2011/06/10 12:58
- 名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: xr1in99g)
何時の時代も、弱者が強者に搾取されることは常識だ。 ジャッカルがライオンを狩るなどありえない。
人間も同じ。 臆病者が、力のあるボクシング選手に挑むわけが無い。 そんな、先入観。
それが、今このとき、能力者を狙った連続殺人犯『アビリティ・キラー』として強者を狩っている。
彼の犯行は、常に裏路地だ。 ただ、そこへは彼が獲物を運ぶのではない。
「さあ、命乞いしろ。 先に喧嘩売ってきたのは……そっちだろ?」
黒髪の少年が、大男をねじ伏せ、踏みつける。
少年と男の体格差は明らかに、大男に利があるようにしか見えない。 だが、それでもその少年は、大男をねじ伏せ、既に完膚なきまでに叩きのめしている。
そう、獲物が自ら、彼を裏路地へと運ぶのだ。
「何故……だ? 俺の能力が……」
そう呟く男に対し、少年は包帯の巻かれた左腕で爆発のような手話をしながら、
「自動的にキャンセルされる。 ……不思議か?」
大男は、能力者。 少年も、能力者。 ただ、出来損ない。
「能力を扱うにあたり、生命エネルギーを使うのは知ってるだろ? 俺はそれを、DNAを通すことで能力に変換するのではなく、DNAを通すことでそれを元の生命エネルギーに還元し……吸収できる。 吸収して、自分の力に変換する能力者。 一応、遺伝子コード000±0×0補正で政府からは、“廃棄”されたけどな」
少年はコートのポケットからナイフを取り出し、
「ま、知った所で死ぬんだ。 残念だったな、俺に喧嘩を売ったのが運の尽き。 後悔は、……あの世でやってくれよ」
トドメの一突き。 ナイフの切っ先は大男の心臓目掛け、その体にもぐりこむ。 男は、目を見開き、一瞬体を浮かしたと思えば動かなくなった。
……死んだ。
「今月入って何人目だ? まったく、能力者って奴は血の気が多い……」
男の服で少年は引き抜いたナイフにベットリと付着した血液を拭いながら、小さく呟いた。
この世界は、今、狂気に満ちている。
何故、人間と言う生き物は力を得ると他の人間へ振るわずには居られない? 何故、平和的な解決方法が取れない?
何故……自分が頂点だと慢心する? 上には
「上が居るってのに」
呆れたようにその死体を見下ろすと、少年は静かにその場を立ち去った。