ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
- Re: 七つの大罪・四終 ( No.2 )
- 日時: 2011/06/05 14:49
- 名前: ショウタロー ◆mOYvzARW6k (ID: d.8YONjT)
序
月の光を受けて、白色に輝く海に浮かぶ、三日月の形をした島。森に覆われた島はそこだけがぽっかりと穴が開いたようだった。しかし島の中心だけは特異で、そこには辺りを埋め尽くす木々はなく、代わりに様々な機材に囲まれた大きなステージと、そのステージを囲うようにして傾斜がある階段状の観客席があった。アリーナだった。ただ普通のアリーナと違うところといえば、ステージと観客席の間に鉄格子があることだろう。
突然、スピーカーから甲高い音が鳴る。その不愉快な音で、観客席に座っている、つい先ほどまで眠らされていた約一万人の人々が目を覚ます。
次に、全ての照明が一斉に点けられた。眩い光に皆、目を細める。
照明が点けられた事により、ステージの中心に男が立っているのが分かった。男の姿は逆光になっていて、シルエットしか分からなかった。
男は手に持っていたマイクを口元に近づけて、叫んだ。
「紳士、淑女諸君、ごきげんよーう!」
別になんともない言葉だった。
光に目が慣れてきた観客達は、唖然とした様子で男を見た。それもそのはずで、彼らは自分達が何故ここにいるのかすら知らないのだ。
「おや?皆さんなんだか混乱気味ですねぇ……まあ、そうですよねぇ!突然誘拐されて、目が覚めたらこんな所にいたら、そうもなりますよねぇ」
観客の一人が、いったいなんなんだ!と叫んだ。それを引き金に、回りに伝染をして、観客達は困惑、怒りや、質問など、ざわざわと騒ぎ始めた。
「うーるーさいです!シャラップ!シャラップ!今から状況を説明してあげますから、シャラップ!」
男はすぅっと息を吸って、先程よりも気合の入った、大きな声で言った。
「皆さんは誘拐されて太平洋のどこかにある無人島に連れて来られましたー!つまり家には帰れませーん!」
観客達は驚き、先程よりも大きなざわめきを起こした。
「はいはいはいはいはい!騒がなーい!私の話はまだ終わってませんよー!皆さんには、やっていただく事があるんですからー!」
ふざけるな!やら、家に帰して!やらと男に野次が飛ぶ。時々男に、ゴミが投げつけられた。観客席を立ち上がってステージに上がりこもうとする者もいたが、鉄格子があったので、誰もステージには上がって来れなかった。
男はそんなのにはものともせず、右手を高く上げて、叫んだ。
「さあ、入場ですぅー!!!!」
その声と同時に、アリーナの七つの入り口からそれぞれ一つ、計七つの隊列を組んだ集団が入ってくる。集団は異様な姿をしていて、隊列ごとに皆同じマスクを被り、それぞれライオン、イヌ、オオカミ、クマ、キツネ、ブタ、ヤギと動物だった。そして皆、ナイフ、刀、剣、短剣、バット、斧、槍、弓矢、銃とそれぞれ武器を持っていた。
隊列はそれぞれの入り口から階段を下り、鉄格子の前で足を止めた。
ほとんどの観客達は得体の知れない者達に、怯えている様子だったが、一部の気が強い人間は、その集団に質問を投げかけたりもした。
「さあ皆さんにやってもらうのは一つ、この動物達に殺される、です!」
動物のマスクの集団が、それぞれの武器を構える。
「さあ、七つの大罪を背負いし者達よ!逃れよ、もしくは戦え!」
その言葉が終わると同時に、ヤギのマスクを被った女が、近くに居た男を槍で突き刺し、ブタのマスクを被った男が、太った男の首を斧で切り落とし、キツネのマスクを被った男が金持ちそうな女を銃で撃った。ライオンのマスクを被った女が中年の女を絞め殺し、イヌのマスクを被った男が女をナイフでズタズタに引き裂き、オオカミのマスクを被った女が背の高い男の頭をバットで潰し、クマのマスクを被った女が、逃げ出そうとしている男に弓を打った。動物達の殺戮が始まった。
アリーナは混乱と悲鳴、怒号で埋め尽くされ、人間達は我先にと駆け出し、アリーナを飛び出した。
ステージの中央に立っている男もまた、マスクを被った。
人間のマスクを……